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すべての人が「しあわせ」を感じられるインクルーシブで豊かな社会の実現に向けて、各界のリーダーから提言をいただく連載コンテンツ「Inclusion Rally」。
第12回は「教育を通じた境界線のない世界の実現」というテーマで、WORLD ROAD株式会社 共同代表/HI合同会社 代表/青年版ダボス会議 One Young World 日本代表 平原 依文氏に、教育にかける想いや、平原さんの考える「人とのつながり」や「境界線」についてお聞きしました。
――平原さんはWORLD ROADの共同代表を務めておりますが、どのようなお仕事をされているのですか。また、立ち上げたきっかけを教えてください。
幅広い世代へのSDGs教育のため「地球を一つの学校にする」をビジョンに掲げるWORLD ROAD(株)を設立し、教育機関向けの事業と、SDGsに関連した法人向けのコンサルティングやブランディング事業を仕事にしています。
私は幼少期からさまざまな経験をしてきたので、それが会社の立ち上げや、今につながっていると思います。
小学校の時、家庭環境がきっかけでいじめを受けていたのですが、中国人の女の子が転校してきてからは、代わりにその子がいじめられるようになりました。ですが、その子のいじめに負けない強さで皆と仲良くなる姿に憧れて中国に興味を持ち、小学校2年生の時に中国に留学しました。
中国の歴史の授業では日中の歴史について学び、そこで日本が行った中国侵略の残酷さを初めて知りました。その影響で学校では皆に無視されるようになり、「今のままでは中国人と日本人は一生わかり合えない。この境界線はなくなることがない」とずっと思っていました。
そんなある時、先生がアメリカの歴史の教科書を見せてくれたのですが、同じ世界の歴史のはずなのに中身が違うことを疑問に思い、なぜなのかを尋ねると「権力のある人が、都合の良いように歴史を塗り替えてしまう。でも、あなたの目の前にいる人は嘘じゃない。中国人、日本人として向き合うのではなく、まず一人の人として見て、その人たちと一緒になって新しい価値をつくってほしい」と言ってくれました。それまで、自分は国籍で勝手に壁をつくってしまっていたと感じ、反省しました。
それから、友達は何が好きなのか、休み時間に何を食べているのか、を見るようになりました。気づけば距離も縮まり、相手も「日本人」じゃなくて「平原依文」として接してくれるようになりました。このことで、「境界線を引かずに接すれば偏見や差別、戦争はなくなる」と感じ、「お互いが学び合えるような教育に変えたい」と決心しました。
――教育に携わりたいと強く感じたのはいつごろですか?
帰国し、日本の大学を卒業後、一般企業に就職しました。その後、父が余命2週間と宣告を受けたことを知りました。亡くなる直前、父から「あなたにはあなたらしく笑顔でい続けてほしい。教育を変え、境界線を溶かすことが夢なら、それをかなえてほしい」と言われたんです。
あらためて何がしたいのかを自分に問いかけた時、幼少期の経験というのもありましたが、それに加え大学受験や就職活動の時にだけ力を入れる日本の教育への違和感もあり、「世界の境界線を溶かすような教育に携わりたい」と、勤めていた会社の退職を決断しました。
――教育づくりをしたい、という想いは幼少期から強く感じていたのですね。WORLD ROADの立ち上げ背景や、教育に対する価値観を教えてください。
共同代表をしている市川とは、目的を持つのではなく、受験などの手段として勉強する日本の教育へ、同じように違和感を持っていました。また、「誰もが先生にも生徒にもなれるような、『学びの循環』をつくることが大事」という共通認識もありました。
解決するにはSDGsを活用して目標を浸透させていくし必要があると考え、「SDGsをすべて達成できたらきっと世界は変わる」と、一緒に教育の事業をやる決意をしました。
――「地球を一つの学校にする」というミッションがすごく印象的なのですが、その背景を教えてください。
先進国には心の拠り所がなく迷う方がいたり、発展途上国には安全な道や家など、最低限の人権すらない場所もあったりします。このように世界には、経済の豊かさに関係なく、さまざまな課題があります。このような社会課題を解決し、「本来誰もが持つべき道、そして一本の道を歩けるような世界をつくりたい」という想いで「WORLD ROAD」という名前をつけました。また、これまでの経験から「教育があれば道はつくれる」と考え、ミッションを「地球を一つの学校にする」としました。
――WORLD ROADで印象に残るエピソードはありますか?
2021年6月に、SDGsに取り組む世界中の人たちにインタビューして、200カ国の方の声を募り、本をつくることにしました。しかし、世界がコロナ禍になってしまい、直接お話を聞くことを断念し、「あなたの写真と夢を送ってください」とSNSで発信しました。最初は私と市川のつながりで取材しようとしましたが、半年経っても40カ国しか集まらなくて...。
今思うと、自分たちだけでやろうとしすぎていたんです。それに気づいて、すでに協力してくれている皆に初めて「200カ国集まらない」って弱音を吐いたんです。
そうしたら皆が「早く言ってよ!声かけてみるよ。皆の夢なんだから」と、それぞれつながりがある人たちに声をかけてくれたんです。結果、200カ国の声が集まり、『WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs』というタイトルで無事に出版することができました。その時に、「私たちと皆に深い心のつながりがあったから出版することができたんだな」と感動しました。
著書:WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs
――平原さんの人生の転換期にはいつも「人との出会いやつながり」がありますね。人と人とのつながりには、何が重要だと思いますか?
「相手に伝えたいことを意識する」ということは心がけていますね。特に、今の時代で大切だと感じるのがSNSです。誰かとSNS上ではつながっていたとしても、「いいね」をする関係で終わってしまっていて、感情・想いといったものに本当の意味で共感できていないように感じています。「いいね」のように簡単に共感を示せるのも良いと思いますが、きちんとお互いの感情に寄り添えないとつらくなると思います。正直、SNSは得意というわけではないのですが、近しい人に対しては、「いいね」を押すだけではなくて、その人だからこそ伝えたいことをしっかり文章で伝えることや、その文章で感情がきちんと伝わっているかということも意識しています。
――平原さんのように行動することは、多くの人には難しいと感じることもあると思います。継続の秘訣はありますか?
「他人と比較しない」ことです。他人ではなく、昨日の自分と比較すると、十分頑張っていると思うので、失敗をしても、自分の頑張りを「大変良くできました」とほめてあげることが大事だと思います。
――WORLD ROADの今後の取り組み、挑戦していきたいことについてお聞きかせください。
『WE Have a Dream』のドキュメンタリー映像化が決定したのですが、これも今まで大切にしてきた人とのつながりによるものです。また、この本を通じて、さまざまな専門家と事業パートナーとして提携できることになりました。これからも新しいものをつくっていくつもりです。
――「世界中の境界線を溶かす」ことをビジョンに掲げられていますが、「境界線がなくなった未来」はどうなると考えていますか?
「それぞれが個性を持って生きている世界」ではないでしょうか。
世界に境界線ができたのも、さまざまな想いや歴史があってのことで、一気になくすことは難しいと思っています。あえて「溶かす」と表現しているのも、お互いを尊重しながら対話をするべきだと考えているからです。
今は「多様性」という言葉が先行してしまっていますが、私も感情が表に出てしまうこともあるし、必ずしもお互いに理解できるわけではないですよね。だから、「お互いについて一つでも知ることが大切で、理解しなくても良い」という考え方がもっと広がってほしいです。
――前回のご登壇者、高浜氏からのご質問です。
「自分らしさ」への過度なこだわりは、時につながりへの障壁となり、分断を深めます。逆に、過度なつながりへの強制は、同質化を強要することにもなりかねません。
平原さんはこの二つを尊重するために、どういった取り組みが必要だと思いますか?
大切なのは「相手に押し付けないこと」だと思います。
自分らしさは大切ですが、相手に強要するべきではありません。共感はしなくても良いけど、まずは相手を理解すること。自分らしさを持ちつつ、本当に大切にしたい相手を尊重することが大事だと思います。
WORLD ROADのPR/FUTURE CREATORである平松さんと
WORLD ROAD株式会社 共同代表/HI合同会社
http://www.worldroad.org/
「PROJECT hope」※One Young Worldスピンオフイベント
https://special.discoveryjapan.jp/project/projecthope/
2020年よりスタートしたインクルージョンラリーは、今回の投稿を持って終了いたします(全12回)。
ゲストの皆さま、ならびに読者の皆さま、ありがとうございました。「この指とーまれ!」では、今後も多様性についての記事を発信していきます!
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Inclusion Rally2022.2.7
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