Inclusion Rally
2020.12.5

自分を愛し、自分らしく生きる

ブルボンヌ氏 / 女装パフォーマー ライター(前列右から2人目)

すべての人が「しあわせ」を感じられるインクルーシブで豊かな社会の実現に向けて、各界のリーダーから提言をいただく連載コンテンツ「Inclusion Rally」。第3回は女装パフォーマーやライターなど、幅広くご活躍されているブルボンヌさんに寄稿形式でご登場いただきます。トライアンドエラーをくり返して今の境地にいたったというブルボンヌさんに、「自分らしく」生きるヒントを、社会の変遷、ご自身の経験も踏まえながら語っていただきます。

皆さまこんにちは。女装パフォーマーのブルボンヌでございます。

このたび、こちらの「この指とーまれ!」で自分語りを、と召喚していただきました。

さすがここ数年、店舗にレインボーフラッグを掲げてくださったり、全国のプライド会場でブースを出してくださったりと、LGBTフレンドリーの権化のような丸井さんのサイトでございますぅ。

と早速、太客さまに媚びたような匂いから始まって、こちらの他の記事とは発する風味が違うかもしれませんが、まさに多様性!の一つとして、スパイシーな女装語りにお付き合いいただければ幸いです。

さてここ数年、国連の持続可能な開発目標ことSDGs17の目標に「ジェンダーの平等」が入り、オリンピック・パラリンピックの五輪憲章には「性的指向の差別撤廃」が名言されていたり、LGBTやジェンダーはすっかり社会がマジメに取り組むイシューとなりました。

49年前に保守的な内陸県の岐阜で生まれ、第二次性徴期に同性のクラスメートに恋をし戸惑ったアタシからすると、まさに隔世の感です。そもそも当時の日本には、文化に通じる大人以外が手にできる情報に「同性を好きな人間が大勢いる」なんてものはなかったんです。そんな地方少年にとって最初のビッグバンは、裏通りの書店で見つけた『薔薇族』というゲイ雑誌でした。それまで、まわりのストレート男子が喜ぶエロ本の中の、脇役としてチラチラ映り込む男性の裸体を砂金を集めるように拝んでいたアタシにとって、それがメインディッシュとなるメディアがあり、またそれを求める同類がほかにも大勢いたことに気づけた、まさに世界が拡がる瞬間でした。

その雑誌の文通欄での出会いから、当時虐げられてもいたオタク少年だったのが幸いし、インターネット以前のパソコン通信を使い、日本初の東京のゲイBBS(電子掲示板)に参加をします。そこで出会った一周り年上の男性と、大学上京にあわせ同居を開始。二人で自分たちのパソ通ネットも開局したのでした。ちょうどそのころ、女性誌『CREA』の『ゲイ・ルネッサンス91』から始まったとされる、90年代初頭の雑誌ゲイ特集ブームがあり、上京して勢いづいていたアタシはピチピチの大学生ゲイとして『宝島』や『ホットドッグプレス』などの誌面に顔を晒します。実はこのころまで、シスターボーイやMr.レディといったフェミニンタレント枠ではない一般男性ゲイがメディアに顔を出すことはほとんどない時代で、それはゲイのためのゲイ雑誌上でさえそうでした。「若い感性を」と学生編集として呼ばれた新ゲイ雑誌『Badi(バディ)』で、ドラァグ・クイーン番長のマーガレットやその後大活躍するマツコ・デラックスらとともに、読者が当たり前のように顔(やパンツ)を出すバラエティ記事、ゲイのイケメンモデルの写真表紙、神前同性婚、代議士インタビューなどの新しい開けたスタイルを模索しつくっていきました。20代~30代半ばまでのアタシは、ゲイによるゲイのためのメディアという狭く濃い世界の中で、ひたすらものづくりに明け暮れた日々を送ったのです。

雑誌づくりと同時に、女装という自己表現も身に付けました。パソコン通信ネットの周年オフ会の余興として94年に初めて手を出した女装ですが、思い返せばその芽は幼少期から。6歳のころにおかんに連れられ観た映画『007』シリーズでは妖艶でファッショナブルなボンドガールに憧れ、また七変化して闘うアニメヒロイン・キューティハニーにも釘付けでした。そして常に敵対する悪女たちの「女らしさをぶち壊す」振る舞いにもゾクゾクしていました。それでも現実の世界に戻れば、周囲と違う自分らしさを「オトコオンナ」とからかわれ、浮きたくない一心で「違うもーん!」とますますナヨナヨ否定していたあのころ。その隠して押し込むべきものでしかなかった女性性を、濃縮爆発させられたような派手な女装パフォーマンスは快感でもありました。日本初開催のプライドパレード(1994年の「東京レズビアン・ゲイ・パレード」)を知った時は「繁華街をゲイですって歩くなんて正気の沙汰じゃない」と思ったものの、沿道からこそこそ見てみたら案外楽しそうだったので、翌年からは女装でフロートを出して参加していました。この変わり身の早さも、浮いたり否定される不安よりも、自分自身をさらけ出す気持ち良さが、変身をすることで勝ったからだと思います。

女装という武装のおかげで、ちまちま絵を描いたり学級新聞をつくっていたオタク少年の中にため込んだ反動の表現欲求は、おもしろおかしいパフォーマンスに育ち、編集者を辞めた後も全国のイベントなどに呼ばれるどさ回り女装として、メシの種にもなっていきました。そして2006年に放送が始まった『おネエ★MANS!』あたりからのオネエブームの尻馬に乗って、今度は一般社会のメディアでまさしくゲイ者としてお呼ばれする活動が始まりました。

そんなころに知り合い、仕事のお世話をしてくれるようになったうちの名物ゲイ社長と、慌ただしくオネエバブリーな時期のお仕事をこなした日々。けれど、呼ばれるだけでもラッキーな人気バラエティ番組のひな壇で、ただ悪目立ちするビジュアルが映るだけで何も爪あとを残せなかったり、深夜番組でイケメンに飛び掛かったりするたびに、モヤモヤも募っていきました。怖い事務所だったらポンコツだと怒られそうなところですが、優しい社長は「得意じゃない方向がはっきりわかって良かったじゃん!」と、比較的マジメに性の問題を語れるお仕事や、自治体や企業での講演などへの流れを強めてくれました。そうして10年前に務めたNHKラジオ第1のお昼の曜日パーソナリティのお仕事で、アタシは自身の根深い卑下に気づかされることになります。自分のような、ゲイで女装をしている人間が、とりあえずのフックになりそうなお祭りビジュアルも奪われ(ちゃんと女装してラジオで話してはいましたが、リスナーさんにとってはただ生ぬるいおっさん声...)、お昼に農作業などをしている全国の真っ当なおじ様おば様に受け入れられるのだろうか、と不安しかありませんでした。そこでアタシがとったのは自虐ギャグのオンパレードです。先に「こんな変なの出てきちゃってごめんなさーい」と下手に出ることで、傷つくことを回避しようとしたんですね。そして2年後の最終回、思いがけず全国から本当にたくさんの、別れを惜しんでくださるお便りが届きました。「あなたを知っていろんな人がいることがわかりました」と、ゲイの中のメディアで育てていただいた想いを、その先に届ける役が果たせたことにも自信が持てました。そして何より、「ブルちゃんはいつも自分なんて、というけれど、とても素敵なんだから、そんな風に言わないでね」というお便りで、自分は異端だ、「普通の人」に受け入れられるはずがないと決めつけていたのは、むしろ自分のほうだったのだと、一番遠くに感じていた立場の皆さんに教えてもらえたんです。

あっという間に時代は変わり、丸井さんのような企業がこうしたテーマを積極的に扱い、真面目なニュースや政治の議題としてもLGBTが語られるようになりました。アタシ自身も東京レインボープライドの総合司会や講演、性教育など、今まで以上にやりがいを感じられるありがたいお仕事も多くいただき、気づけば30年を迎えた同居男性と猫と暮らす、なんだか落ち着いたしあわせのような生活も送っています。

でも、ダイバーシティやインクルージョンなんて小ぎれいな単語が生まれる前から、アタシはずっと男が好きな男だったし、気心しれた悪友なら「とんだオカマね~!」なんて言い合いながら毒も吐くし、たまには地下のクラブで下衆いシモネタの余興だってやり続けるとも思います。

10年、20年も経てば、意外なくらい社会の感覚や扱いは変わっていく。こんな夢のような変化が実際にあったのだから、今までにないやり方を前例がないからと潰したり、可能性を自分から否定的な思い込みで閉じてしまうのは本当にもったいないことです。

そして同時に、社会という波の流れはいつ真逆に変わるのかもわかりません。だからこそ、波に従い乗るだけではなく、自身の生と性を肯定し愛するプライドを錨(いかり)に、自身の頭でしっかり考えた想いを羅針盤にして、自分のオリジナルの人生を渡っていきたいと思うのです。いつか、いい旅だった、いい仲間たちだったと思いながら終えるその日まで、虹の向こうをめざし続けたい。自分の色もあなたの色も素敵だねと、手を振り合っていきたいのです。

*¹おもにゲイ男性が、女性性をデフォルメした姿で行う派手なパフォーマンス

 

―前回ご登場いただいた土井さまから「同調圧力が日本の特徴だと思っており、さまざまな人にとっても、つらさの原因となることが多いように感じます。悪い意味での同調圧力がより少ない社会はどうすればできると思いますか?」というご質問をいただきましたが、そちらについていかがでしょうか。

以前、街中で堂々と手をつなごうとしてくれた相手を、「(同性同士なのに)人が見てるぅ」と振り払ってしまった時、キョトンとした顔をされました。「もう一生会わないかもしれない人たちのことなんか気にするんだ」と。日本では珍しいほどの自己肯定感を持つ眩しい人のそばにいたおかげで、「自分は通りすがりの見知らぬ人や、匿名で文句を言ってくるような人のほうを大事にして生きていたのだ」と気づかされました。もちろん簡単に人は変われませんが、スプーンで少しずつでも穴をあけていけば、10年後、20年後には自らを閉じ込めていた牢獄を脱することもでき、太陽を見られるのでは、なんて思っています。私にそれを気づかせてくれたように、自分を愛して、自分らしくあることのすばらしさを積極的に伝える「人」や「作品」、「場」が増えることで、生きづらさも少しずつ減っていくのではないでしょうか。

Profile
ブルボンヌ 女装パフォーマー/ライター
1971年生まれ、岐阜県出身。早稲田大学文学部在学中の1990年、ゲイのためのパソコン通信を立ち上げる。 ゲイ雑誌『Badi』の主幹編集と同時に女装パフォーマー集団を主宰し、現在は新宿2丁目のセクシュアリティフリーMIXバー「Campy!bar」グループをプロデュースし、2019年11月グランドオープンの渋谷PARCOに3店舗目も展開。
NHK などのLGBT・女性問題を扱う番組や、オネエキャラクターとしてのバラエティ、お昼のAMラジオのパーソナリティなどテレビ・ラジオ出演。
近年では、企業内セミナー、自治体や大学でLGBTQや性の問題に関する講演活動と、東京・九州・沖縄など全国のプライドイベントでのMCも務める。

―次回ゲストへつなぐラリー

―次回ご登場いただく山本 まさこさま(児童養護施設出身。児童養護施設出身者が成人を迎える際、振袖や羽織袴を着て写真を撮りお祝いするボランティア活動「ACHAプロジェクト」代表)へ、質問はありますか。
ブルボンヌ:最近は推進の方向に向かっているそうですが、日本では家庭で養育される里親制度が欧米に比べてかなり遅れているとうかがっています。性的少数者の多くは子どもと縁遠くなりますが、愛情をもって子どもを育てる夢を持っている方も多いです。擁護を要する児童と性的少数者カップルの縁組の可能性について、どう思われているかうかがいたいです。
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