この指とーまれ! by MARUI GROUP

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2021.1.11

「顔の見える電力™」を通じて、グリーンエコシステムを共に創る

  • 大石 英司氏(左)
    みんな電力株式会社 代表取締役社長
  • 岩野 さおり氏(左から2番目)
    16歳の環境活動家
  • 酒井 功雄氏(右から2番目)
    19歳の環境活動家
  • 榛葉 恵美子(右)
    株式会社マルイファシリティーズ所属(1999年入社)

気候変動の問題は「気候危機」としてとらえられ始め、この課題解決に向けた企業の取り組みに注目が集まっています。また、コロナ前に戻してはいけない「グリーン・リカバリー」という考え方も提唱されています。「顔の見える電力™」を掲げる大石氏と、学生環境活動団体「Fridays For Future Tokyo」に参加する酒井氏と岩野氏、そして丸井グループで再生可能エネルギーの調達を担当する榛葉が、Withコロナ・Afterコロナを見据えたグリーンエコシステムの可能性を語り合います。

「顔の見える電力™」でつながるステークホルダー

榛葉:丸井グループが今取り組んでいるのが「RE100」です。これは、マルイ・モディといった店舗、私たちが働いているオフィスや事業所で使用する電力を再エネ率100%にしようというものです。もともとは電気使用量を減らしたり、省エネの機器に変えていこうという考えでしたが、現在、丸井グループの店舗では飲食のテナントさまが増えているので、使用量を減らすことには限界があり、再エネに切り替えていくことに方針を転換しました。その時に、みんな電力さんとお話しする機会があり、2018年9月から新宿マルイ 本館を再エネ電力に切り替えたことを皮切りに、他店舗にも展開している状況です。2020年は再エネ率50%を達成する予定です。

大石:新宿マルイ 本館では今、当社の電気を使っていただいていて、ここの電気は青森の風力、長野県の水力、そして福島県の太陽光発電所から来ています。

榛葉:大石さんはどういったことがきっかけで、「顔の見える電力™」を始められたんですか。

大石:通勤電車の中で、目の前にいた女性がソーラー付きのキーホルダーを鞄にぶら下げていたのです。ちょうど私の携帯電話の電池がなくなりそうだったので、目の前の女性から電気を買えないかなと思ったのがきっかけです。そこで気づいたのは、これまで電気は石油会社や大手電力会社など一部の人が独占している富だったのが、今や誰でもつくれる時代になったということです。私の基本的な事業コンセプトは、格差や貧困の解消がベースになっています。電気は誰でもつくれる富なので、皆でその富をつくって自分のパーソナリティを付加価値にすることができれば、独占されていた富が分散されるのではないかと考えました。そして2011年に、「顔の見える電力™」を供給するみんな電力(株)を設立しました。

酒井:生活の中では食料もそうですが、トレーサビリティが担保されていることって少ないですよね。自分と地球や社会問題との関係性をどんどん感じづらくなっている中で、そういった「生産者や事業者の姿が見える」取り組みをされているのはすばらしいことだと思います。

大石:再エネなら何でもいいというわけではなくて、最近はグリーンウォッシュといって、やったふりをする企業が増えています。地方の山を切り崩してメガソーラーをつくったり、バイオマス発電所を建てるためにフィリピンの熱帯雨林を伐採して日本に持ってきて「再エネです」とする人たちもいるのです。そのため、「顔を見せる」ことが重要なんです。

榛葉:みんな電力さんには、再エネ導入のきっかけをつくっていただきました。私はいろいろな会社の方とお話しするのですが、みんな電力さんのことは必ず話題に出てきて、ブロックチェーンの技術が高く評価されています。また、大石さんを丸井グループの会議にお招きし、お話ししていただく機会がありました。社員の意識も高まり、みんな電力さんの電気を買うようになった人が出てきたりして、良かったと感じています。現在も、みんな電力さんと協業プロジェクトを進めているところです。具体的には、エポスカードの会員さまと一緒に再エネの普及に貢献できる仕組みをつくっています。それが私はすごく楽しみで、再エネをもっと広めていきたいと思っています。

岩野:「こういう社会をつくりたい」とか「未来を守りたい」とか、決めた目標・課題にしっかりコミットできる会社が出てきたということに対して、すごいなと思いますし、自分の会社だけがグリーンになってそれが価値になるのではなくて、サプライチェーン全体をグリーンにしていく、もっと広くつながっている企業皆で再エネにしていこうというところがすばらしいと思います。

酒井:これは二人で話したアイデアなのですが、丸井さんに提案したいことがあります。「RE100」の取り組みとして、会社のオフィスなどをすべて再エネ化すると思うのですが、コロナ禍でリモートワークがどんどん進んでいるので、自宅で働いている人たちの家庭も「RE100」の対象として再エネ化するのはどうでしょうか。

榛葉:私たちは、高圧の電気を大きな施設に供給する業務を行っています。家庭は低圧の電気になるので今のところは行っていないのですが、今後、店舗やオフィスの再エネ化が進み、家庭にも販売できるようなスキームができるのであれば、そういうことも検討していきたいですね。

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生活者の意識を変えることが課題

大石:私たちの課題の一つが生活者の意識です。皆さんどちらかというと価格比較サイトで調べるなどして、料金の安いところを選ぶ方が多いんです。酒井さんと岩野さんはうちの電力を選んでいただいているそうなのですが、それはどういったきっかけですか。

酒井:僕の場合は、テレビ局のネット番組に呼んでいただいた時に、その番組でみんな電力さんの話をしていたんです。ちょうど母がその放送を見ていて、「うちもこれに替えよう」と言ってくれたのがきっかけですね。

岩野:私は昨年、脱炭素運動をされている活動家の方とご一緒させていただき、「気候変動とエネルギー問題はすごく密接する問題で、国レベルで対策が進められている」といったお話をうかがったんです。それがエネルギーについて見つめ直す機会となりました。電力を切り替えたいと思っていろいろ探したところ、みんな電力さんを見つけ、ここがいいなと思ったのです。

大石:そうなんですね、ありがとうございます。生活者が気候変動を意識し、再エネ化に取り組むことは企業にも影響を与えます。

榛葉:丸井グループでは、エポスカードに登録している顧客情報を引き継いで、簡単にみんな電力に申し込めるシステムを開発しています。お客さまの「ぜひやりたい」という気持ちと簡単に移行できる仕組み、そしてさまざまなステークホルダーと共創してそのムーブメントを大きくしていく、これに、この秋からしっかり取り組んでいこうと考えています。700万人を超えるエポスカード会員が再エネに切り替わったら、世の中が大きく変わるきっかけの一つになると思います。

酒井:再エネは「高い」というイメージがまだ根深くあると思います。企業が一番の再エネの需要家だと思うので、企業がどんどん再エネを使って、「再エネは高くないんだよ、一つの選択肢として十分ありえるよ」ということを示し、広げていくことが社会的な認識を変えるために必要だと思います。

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一人ひとりができる範囲で行動する――それがやがてムーブメントになる

大石:お二人は環境省に再エネ利用に関する意見書を提出したんですよね。手応えはどうでしたか。

岩野:環境大臣が最初に、「環境省というのはエネルギー政策にガツガツと入っていけないが、できる範囲で最大限のことをやりたい」とおっしゃっていただきました。私たちも「変えたいのは日本のエネルギー政策です」というお話をしたら、「組織横断的に行政全体で取り組まなければいけない問題という認識も生まれている」とのことでした。

大石:大きな力だと思いますよ。僕ら世代がつけを回している、将来世代である皆さんが「そうではないだろう」と声を上げることはすごく説得力があることだと思います。

酒井:AfterコロナはそのままBeforeコロナの状態に戻すのではなくて、環境に配慮した形など、ニューノーマルな方向に向けていくのが重要だと思います。昨今の気象災害などを見ると、環境問題のタイムリミットはすぐそこまで来ている気がします。一刻も早く行動を起こさないといけないし、もっと多くの同世代の人たちと連携して、世代としての声をつくっていきたいと思っています。

榛葉:運動に参加してみて、周囲への影響はありましたか。

岩野:一番変わったのは家族です。普通は身近にいても、あまり家族と社会問題などを語り合ったりしないと思うのですが、私はずっと「気候変動」や「再エネ」について言い続けていました。実際にマーチに参加するなどアクションを積み重ねていった結果、2019年9月のマーチには母が仕事を休んで参加してくれたんです。電力の切り替えも母が「いいね」と賛同してくれて実現したことですし、食生活でも畜産製品を減らすよう意識するようになったところが大きな変化です。

大石:感激しました。自分が提供しているサービスがご家庭の話題になって、そこから電力を切り替えるというアクションにつながったという話を聞いて、やっていて良かったと本当に思います。うちの社員もすごく喜ぶと思います。

酒井:一人ひとりができる範囲のことをするだけでもまわりは見ていると思うので、アクションの幅は人それぞれで問題はないと思います。むしろハードルを下げて広げていくということがすごく大事だと思います。僕たちの使命は、忖度せずに理想を言い続けることです。何にも縛られず「こうあるべきだ」ということを発言し続けることが必要なのかなと思っています。

大石:まさにその通りです。今後、いろいろな垣根が取り払われて、一人ひとりがより創造的に生きていけるようになると思います。そして、その垣根の一つに「顔の見えない」状況というものがあると思うのです。だから「顔の見える関係」をさらに構築していくということは、私にとってポストコロナにおける一番大事なテーマだと思っています。今日思ったのは、お二人はものすごくしっかりしているし、自分の学生のころとは生き方を見つめ直す深さが違い、すごいなと思いました。だからもっと自信を持って、自分たちが「こうあるべきだ」「私たちの世代は社会を自分でつくるんだ」と思うことを世の中にどんどん発信し、ぜひ本当にそれを実行してほしいです。それは世の中にとってもすごくいい方向だと思います。

大石 英司

みんな電力株式会社 代表取締役社長 1969年、大阪府生まれ。明治学院大学卒業。広告制作会社などを経て凸版印刷株式会社に入社。デジタルコンテンツ流通事業、映像事業、ファッション事業などを立ち上げ。2011年、みんな電力株式会社設立。既存のインフラを活用した電力のトラッキングシステムを開発し、「顔の見える電力™」を供給している。

岩野 さおり

16歳の環境活動家セヴァン・スズキ氏のスピーチを見たことから、気候変動や地球環境問題に興味を持つ。気候のための学校ストライキを始めたグレタ・トゥーンベリ氏に共感し、自分もアクションを起こそうと思い、学生環境活動団体「Fridays For Future Tokyo」に参加。

酒井 功雄

19歳の環境活動家アメリカに留学した際、環境科学のカリキュラムをきっかけに地球の現状に危機感を持つ。学生環境活動団体「Fridays For Future Tokyo」に参加し、気候変動問題の解決を呼びかけるマーチなどを行う。

榛葉 恵美子

2016年4月より株式会社マルイファシリティーズ所属(1999年入社)2019年より同社エコ・マネジメント部で電力調達・企画を担当し、再エネの利用拡大(グリーン・ビジネス)を推進している。

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