Well-being
2023.3.6

「Well-beingに働きたい!」~マネジメント編~

人と組織の活性化を進める上で、健康でイキイキと働くことが重要であるとして、働く人の「しあわせ」と「ウェルネス」をかけ合わせた「Well-being」が世の中からも広く注目されるようになりました。

目次

    私たちが心身ともに健康でイキイキとWell-beingに働いていくためのヒントを、丸井グループの産業医であり、Well-being経営を推進する執行役員の小島 玲子先生と、同じく産業医の日比野先生、小口先生にお聞きする連載企画、「Well-beingに働きたい!」をスタートします!

    第1回目の今回は、「Well-beingな組織づくり」をテーマに、社員の病気やケガを予防するだけにとどまらず、創造性を引き出し、生産性を高めるためのマネジメント方法を小島先生にお話をうかがいました!

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    「Well-being」をめざす時のマネジメントのポイント

    ――組織の活性化にとって世の中でも「Well-being」が注目されていますが、「自分たちもWell-beingなチームをめざしたい!」と考えた時に、マネジメント目線での大切なポイントを教えてください!

    働くWell-beingには、大切な3つのポイントがあります。

    Well-beingに働くための3つのポイント

    ゴールリワード(意味感)

    目標達成や、意味の喜び。「誰かの役に立っている」など、自分の仕事がどこにつながっているかに意味を感じられる喜び

    プロセスリワード(進捗感・成長・楽しさ)

    能力発揮や成長、活動そのものの面白さ。仕事が進捗していると感じられ、プロセスの中で自分が役割を発揮できていると感じられる喜び

    自己選択

    やらされ感ではなく、自分の意思で行動を選択できる喜び

    この3つの喜びをチームメンバーが持てるようにしてあげることが、マネジメントが気をつけるポイントです。口で言うほど簡単ではないものの、これらを工夫されているマネジャーは多くいます。

    丸井グループでは、人事制度や企業文化として、この3つそれぞれに当てまるような取り組みがあります。
    例えば、半年に一度行われる自己申告では、「◯年後にこうなりたい」という中長期目線で自分の仕事やキャリアの目標を言語化し、①のゴールリワードを定期的に設定しています。そして、①で設定したゴール(目標)へ向けて、四半期ごとに上司と共に②プロセスリワードを確認しています。
    そして、③の自らの意思で行動を選択することに関しては、経営会議や学びの機会にも手挙げをして参加し、その意思を上司はじめ周りのメンバーが後押しする「手挙げの文化」が定着しています。

    ただ、やはり個々の職場で、ゴールリワードやプロセスリワードを感じられることが大切です。特に、プロセスリワード(仕事が前に進んでいるという感覚や、成長できているという感覚)が低いと、仕事がつらくなってしまいがちです。

    ――チームメンバーの年齢によって、気を付けるポイントに違いはありますか?

    そうですね、一般に若手メンバーは②のプロセスリワードに関して「自身がきちんと成長できているか?」をいかに実感できるかが大事ですし、年齢が高い方ほど、①「自分の能力を活かして、周りの人の役に立っているか」といった意味感を重視する傾向があるので、そうした傾向を見ながら個別に後押しすることが大切だと思います。

    その人にとってょっと大変なこと」が成長を促進する

    ――仕事にストレスは必要でしょうか?また、ストレスをプラスに転換するためのコツを教えてください。

    良い質問ですね!自分にとって適度なストレスかどうかをある程度見極められることは、とても大切です。
    ストレスは元々、力学用語で「負荷」をさします。人間は負荷ばかりでは押しつぶされてしまいますが、休息ばかりでは成長や能力発揮の喜び、目標達成の喜びにもつながりません。適度なストレスは働く上でのWell-beingにとって必要です。

    仕事におけるストレスに関して大切なのは、負荷と回復のゆらぎを意識することです。
    筋トレに例えると、筋肉に大きな負荷(ストレス)をかけると筋繊維が断裂して筋肉痛が起こります。その後、休息を取ることによって筋肉が回復し、元の負荷より少し強い負荷にも耐えられるようになります。これを「超回復」といい、仕事における成長も同じことが言えます。人間は、一切ストレスのない状態では成長できませんが、「負荷~回復~成長~負荷」、このゆらぎをうまくつくり出すことによって、成長が促されます。

    ――「適度なストレス」の目安は、どのように見極めるのが良いのでしょうか?

    単純に指標化するのは難しいですが、「その人がやれることよりちょっと大変なこと」と捉えると良いでしょう。
    以下の図のように、働いている時の主観的な状態を分類すると、「コンフォートゾーン」「ストレッチゾーン」「パニックゾーン」に大きく分けられます。

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    「ストレッチゾーン」は、適度な負荷がかかった状態を指していて、このゾーンにいると、成長が促進されます。
    日ごろから、部下やチームのメンバーが今どんな状態にいて、仕事の力量がどのくらいなのかを把握し、その人が常に「ストレッチゾーン」にいられるよう適切な目標を設定することが、一人ひとりの成長を促し、かつ組織の成果につなげるマネジメントの役割として重要です。

    「Well-being」の指標

    ――Well-beingなチームづくりを進めていくうえで、取り組みの成果はどのように測れば良いのでしょうか?

    取り組みを進めるうえで、効果を可視化することは大事ですよね。
    「Well-being」の成果を測る指標においては、世界的な世論調査会社であるGallup社が行った「働くWell-being3問」や、国連機関である持続可能開発ソリューションネットワーク(SDSN)が毎年発表している国際幸福度ランキングなどはありますが、国内で企業ごとのコンセンサスが取れた指標はまだありません。
    世の中において人的資本経営の重要性が高まる中、日本経済新聞主催で「日経Well-beingイニシアチブ」ができ、日本の「Well-being」の第一人者である石川 善樹さんが発起人となって国内企業が20社ほど集まり議論を重ねています。
    その中で、いわゆる「人材版伊藤レポート」を発行された伊藤 邦雄先生を中心とした指標づくりの取り組みに、丸井グループも参加予定です!

    今回は、「Well-beingな組織づくり」をテーマに、丸井グループの産業医であり、執行役員の小島 玲子先生にお話をうかがいました。
    次回は、丸井グループ産業医の小口 まほこ先生に「Well-beingに働くための人間関係」についてお聞きします。お楽しみに!