Well-being
2024.1.15

「Well-beingに働きたい」 #5 〜ライフステージ編〜

私たちが心身共に健康でイキイキとWell-beingに働いていくためのヒントを、丸井グループの産業医であり、Well-being経営を推進する執行役員の小島 玲子先生と、同じく産業医の日比野先生、小口先生にお聞きする連載企画「Well-beingに働きたい!」。 第5回のテーマは"ライフステージ"。 女性の健康課題が注目される理由や、ライフステージ別にどんな健康課題があるか、丸井グループで産業医を務める小口まほこ先生にうかがいました!

目次
    小口 まほこ 先生
    丸井グループ 産業医
    鉄道会社の産業医を1年経験し、その後自動車部品工場、食品製造業、テレビ局などで月1回の嘱託勤務で産業医を経験後、現在は丸井グループウェルビーイング推進部に所属し産業医としてご活躍中!

    「女性の健康課題」に企業が向き合うべき理由

    最近では健康経営の重要性が注目されていますが、その中でも「女性の健康」についての話題をよく目にします。まずは、女性の健康課題に企業が向き合うべき理由から教えてください!

    さまざまな理由がありますが、「職場で実際に困っている女性が多いこと」、そして「女性の健康課題が経済的損失につながること」などが挙げられます。
    「実際に困っている女性が多いこと」についてはデータもあります。経済産業省の調査( 働く女性の健康推進に関する実態調査2018)では、女性従業員の半数以上が、女性特有の健康課題などが原因で「勤務先で困った経験がある」と回答しています。

    勤務先で困った経験の具体的な健康課題

    症状の内訳を見ると、生理不順や生理痛といった月経関連症状・疾病で困った経験のある方は、7割を超え、非常に多いことがわかりますね。 

    働く女性の多くが、さまざまな症状に悩まされているのですね。それによって、企業にどんな影響があるのでしょうか?

    同調査では、女性従業員の40%以上が女性特有の健康課題などが原因で「何かをあきらめなくてはならないと感じたことがある」と回答しています。

    女性の健康課題によってあきらめなくてはならないと感じたことの内容

    正社員・昇進・責任ある仕事・希望の職種・管理職など、健康課題が女性の仕事やキャリアに影響を与えていることがわかりますね。 女性特有の健康課題により仕事の生産性が低下したり、昇進や責任の重い仕事に就くことや自分の望むキャリアをあきらめる女性がいることは、女性だけでなく企業にとっても損失です。

    そんなに多くの方のキャリアプランに影響しているのですね!個人の問題ではなく、企業として取り組むべき理由はここにあるのでしょうか?

    その通りです。女性の健康課題による生産性の低下・欠勤などで生じる経済損失は、1年間でおよそ4,900億円と言われています。
    生理不順や生理痛などを含めた女性の健康課題で困ったことがある方が、セルフケアできることや、職場でサポート受けられることはとても重要だと思います。 健康課題に悩む女性をサポートしていくことは、個々の企業だけでなく、社会として、世の中全体で取り組む必要があるのではないかと考えています。

    女性のライフステージ別の健康課題

    現状として困っている方が多く経済的損失にもつながる女性の健康課題は、どのようにあらわれるのですか?

    女性の健康課題は、ライフステージによって大きく異なります。
    女性の健康は女性ホルモン(エストロゲン)によって左右されていますが、その分泌量が一生を通じてかなり大きく変化します。この変化に応じて、かかりやすい病気・症状なども変わります。特に、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が多い「成熟期」は、あらわれる健康課題も多様です。

    成熟期は20代から40代半ばくらいの、働き盛りの時期に当たりますね。成熟期にはどのような健康課題があるのですか?

    例えば、月経困難症や月経前症候群(PMS)で悩む人が多いのもこの時期だと言われています。
    このほか、子宮内膜症・子宮筋腫・子宮頚がん・乳がん・性感染症などが原因で、身体の不調が出てくるケースがありますね。 
    また、成熟期は女性にとってのライフイベントがとても多い時期です。就職、結婚、出産などにともなう環境の変化・肉体の変化・心の変化でストレスを感じる方も出てきます。 

    30代で結婚される女性が比較的多いと思うのですが、成熟期の働く女性たちは仕事との兼ね合いで、結婚や妊娠・出産のタイミングに悩むケースが多そうですね。

    妊娠・出産も、成熟期の女性の健康課題といえますね。
    働く女性の中には「妊娠はいつでもできる」と思っていらっしゃる方も多いかもしれません。
    しかし、妊娠・出産の適齢期は、25〜30代の半ばぐらいまでと言われていて、35歳以降、妊娠率は徐々に下がっていきます。これは、卵巣にもともとある卵子の数が決まっていて、年齢とともに数がどんどん減少し、卵子の質も下がっていく傾向にあることが原因です。 
    仕事が忙しい方・キャリアアップをめざす方などは、どうしても仕事が優先になりやすいと思いますが、選択肢の広がりや、選択する際の判断する材料になるので、妊娠や出産について知識をつけておくことは大事なことだと思います。

    妊娠・出産の適齢期でも、不妊症治療が必要なケースがありますよね。 実際に私の周りでも年齢に関係なく治療を受けている方がいます。 

    そうですね。 
    実際に、不妊の方は、7人に1人ほどいらっしゃると言われています。そして不妊の半数は、男性が要因とも言われているんです。ですから、これは女性に限らず男性も「子どもを欲しいと思ったけれど、 病院の検査で不妊の要因が見つかって、すぐに授からない」というケースは十分に考えられます。
    「いつか子どもがほしい」と考えていらっしゃる方は、性別・年齢問わずに妊娠についての知識を持つことや、検査を受けることをおすすめします。

    成熟期の女性にはさまざまな健康課題がありましたが、更年期の女性の健康課題も多いですね。まだまだ現役世代ですが、更年期障害などに悩まされる方もいらっしゃいます。具体的に何歳くらいから更年期障害の症状は出てくるのでしょう?

    45歳ぐらいから症状が出てくる方が多いです。
    女性の閉経は一般的に50歳ぐらいで、その前後5年(45歳〜55歳くらい)の計10年間が更年期と呼ばれます。更年期になるとエストロゲンの分泌は減り、月経周期が不規則になって最終的に閉経に至ります。それにともなって、更年期障害の症状が出る可能性があるということですね。早い方では、40歳を過ぎたころから症状が出てくるケースもあります。

    更年期障害では、どのような症状が出やすいのでしょうか?

    多く見られる症状の一つが「ホットフラッシュ」です。
    ホットフラッシュでは体がカーっと熱くなったり、汗をかいたり、胸から顔面にかけて赤くなったりします。更年期障害のそのほかの症状としては、めまい・動悸・頭痛・疲労感などの身体症状、また「最近やる気が出ない」「気分が落ち込みがちで鬱々する」「イライラする」と思っていたら更年期障害の症状だった、というケースもあります。

    私の母は最近落ち込みやすい様子だったのですが、「更年期のせいだったのかも」と今気が付きました。

    実は、更年期障害の症状は非常に多様です。
    このように、女性はライフステージによって気をつけなければいけないことが異なります。

    イキイキ働ける環境づくりをめざして!

    健康課題に悩む女性に対して、周囲はどのようなサポートができますか?

    まずは知識として学んで、女性の健康課題に対する理解を深めることが大切です。そのうえで、周囲に悩んでいらっしゃる方がいたら、困っていることがないかを声がけできたら良いと思います。
    例えば、一緒に働くメンバーに不調を感じている方がいて、その要因として月経困難症・更年期障害などの可能性があれば、産婦人科への相談をすすめることができるかもしれません。
    不調の理由がわからないのは不安だと思いますので、診断がつくだけでも少し安心できる部分はあるかと思います。

    実は私も、生理痛に悩まされていた時ときに、上司の言葉に救われた経験があります。当時、生理痛を我慢することは自分の中では当たり前になっていたのですが、婦人科の受診をすすめられ、「一度婦人科に診てもらおう」と背中を押してもらいました。

    そうだったのですね。
    婦人科と聞くと抵抗がある方も多いと思うのですが、皆さんは「発熱したら内科」「捻挫したら整形外科」に行くなどしていると思います。生理痛はいつものことだと思っていても、中には子宮内膜症などの病気が隠れていることもあります。もう少し気軽に「婦人科に行ってみようかな」と思えるような社会に変わると良いですよね。
    なお、声がけの重要性は女性に限りません。 「女性の健康課題だからみんながサポートする」というよりは、悩む方が女性か男性かにかかわらず、「体調が悪い時は皆でサポートしよう!」「何か手伝えることはある?」などの声がけで、サポートできる関係性を強めていただけるといいのではないでしょうか。

    私自身、上司のアドバイスで病院に行って子宮内膜症が見つかりました。声がけやサポートができる関係性って本当に大切ですよね。女性の健康課題に対して、丸井グループとしてはどのような取り組みをしていますか。 

    丸井グループは女性の健康課題に対して、さまざまな取り組みを行っています。 
    生理休暇もありますし、不妊治療のための休暇は最長2年を分割して取得できます。
    また、働く女性社員のセルフケア支援を目的に、トライアルとしてオンラインでの診療・相談が可能な「ルナルナオフィス」を導入しました。これは、オンラインで婦人科を受診し、生理に関するお困りごとを医師に相談できるほか、必要に応じて低用量ピルが処方され自宅に届きます。「産婦人科に相談するハードルが低くなった」と、利用者から好評で、費用は全て丸井グループが負担しています。
    そのほか、性別や役職問わずに参加できる女性の健康セミナーの開催や、公益社団法人女性の健康とメノポーズ協会が行う「女性の健康検定」の受検者拡大を進め、丸井グループ社員は福祉会からの全額補助で受検できます。これまでに500名以上の方が自主的に受検しています!

    このような取り組みのためか、私の入社時と比べて女性の健康についてとても話しやすい雰囲気になったと感じます!女性の健康課題に対する丸井グループの取り組みは拡充してきましたが、まだまだできることはありそうですね。最後に、今後の取り組みについて教えてください。

    今年1月から2月にかけて行う社内研修(ワーキング・インクルージョン研修)の中で、"性別特有の健康課題について理解を深めること"や"職場での対話を通じてタブー感をなくし、サポートし合えるようになること"を目的に、研修(動画視聴)と職場単位での対話を実施します!
    女性も男性もさらにイキイキ働ける環境を目指して、今後もサポートを広げていきたいければいいなと思います。

    今回は、「ライフステージ」をテーマに、丸井グループの産業医の小口先生にお話をうかがいました。
    ライフステージにおける健康課題は、女性だけの問題ではありません。性別関係なく、そして体調不良時に限らず、サポートし合えるチームづくりが大切です。互いに関心を持って「知る」ことから始めたいですね。
    次回のWell-beingに働きたい!もお楽しみに!