私たちが心身共に健康でイキイキとWell-beingに働いていくためのヒントを、丸井グループの産業医であり、Well-being経営を推進する執行役員の小島 玲子先生と、同じく産業医の日比野先生、小口先生にお聞きする連載企画「Well-beingに働きたい!」 第6回のテーマは"労働時間"。 2019年に「働き方改革関連法案」の法案が施行されてから、大きく見直されるようになった働き方。しかし、繁忙期などの理由により残業が必要なケースも。 そこで今回は、「労働時間」が仕事へのパフォーマンスや身体・心に与える影響はどのようなものがあるのか? 丸井グループで産業医を務める日比野先生に伺いました。
まずは仕事の効率や身体・健康面の観点で教えてください。
労働時間の長さによって仕事のパフォーマンスはどのように変化するのでしょうか?
一般的には、図のように労働時間の長さと生産性は相関が出ており、短いほど生産性が高いことがわかってきています。
パフォーマンスが高いのは1日あたり6時間程度の労働時間で、そこからはパフォーマンスが落ちる傾向にあります。1日の労働時間8時間を超えないようにすることが、生産性は高いといえます。
どうしても繁忙期など、一時的に忙しくなることはあると思いますが、1日で考えると、どれくらい連続して働くと身体や心に支障を来すのでしょうか?
1日の労働時間が13時間を超えるとどんどんパフォーマンスが落ち、15時間を超えると飲酒運転レベルの注意力になるという研究結果も出ています。
これは、起きてからの活動時間なので、7時に起きる人であれば、遅くても20時には仕事を終わらせるような働き方が良いかと思います。どうしても仕事をしなければいけない場合、注意能力の回復には「仮眠」が有効です。
仮眠したら逆に頭がぼーっとしたりしませんか?
仮眠する時間や仮眠の方法を工夫することで、仮眠を効果的に行うことができます。
ただし、仮眠を取って一時的に回復をしても「睡眠負債」は溜まっていきます。
※「睡眠負債」
慢性的な睡眠不足の状態が続き、その負債が蓄積されて心身へ支障をきたしている状態
2週間6時間睡眠の人は、2日間徹夜の人と同程度のパフォーマンスになる
睡眠負債が溜まった状態では、頭の回転など考える力が低下します。仮眠で注意力などは回復できても、寝不足が続くと睡眠負債によってパフォーマンスが最大限発揮できない状態になるので、仕事の効率が低下し残業が増えるといった悪循環が生まれます。
また、睡眠負債が蓄積している状態では気分が落ち込んだり、活力が湧かないという心に与える影響も大きいため、睡眠負債を溜めないこと、すぐに返済することが仕事の効率を高めるためにも必要になります。
残業が多い人の傾向などはありますか?
真面目な方や、成果を出すことに意識を持つ方などが、多い傾向にあります。また、時間外の労働に対価が払われている意識が希薄になっている方も多いと思います。
限られた時間の中で、どのようにパフォーマンスを発揮するか。だらだらと仕事をしないためにも、それぞれの仕事の意味感や働きがいを理解し仕事と向き合うことが大切です。また、チームによっては、「上司がいるから」「部下が頑張っているから」という理由で残業が増えることもあるので、そのようなことが評価などに影響しないということを表明し、話し合うことが最初のステップだと思います。
残業が少ない人が評価されるなどの実績が出てくると、さらに安心感につながり風土につながっていきます。「Pay for Time」ではなく、「Pay for Work」と浸透していくと良いですね。
実際に丸井グループでは、どのように残業削減に向けて取り組んでいるのかについて、ここからは丸井グループの人事部ワーキング・インクルージョン推進担当の方に聞いていきたいと思います。
現在は1カ月あたり約5時間です。2023年度には働き方改革の一環として、所定労働時間の短縮を行いましたが、残業時間が増えなかったことは一つの成果だと思います。
Q:平均残業時間が5時間というのは短いですよね?
そうですね、一般的な企業から見れば少ないと思います。ただ、職種や、グレードによって凸凹はあり、特に管理職は残業時間が多い傾向にあります。
Q:なぜ管理職だと残業が多いのでしょうか?
ヒアリングしてみると、会議・打合せや業務量の多さに加えて、そもそも「残業を意識していない」という声が上がりました。
一方で社内アンケートでは社員の約7割がコロナ後に、働き方に対する価値観が変わったと答え、テレワークを積極的に活用するなどワークライフバランスを重視した働き方をするようになったとのことです。このようなことから管理職の働き方は旧来通りであるということがわかってきました。
そこで、この課題を解消するために「コロナ以降の働き方検討」イニシアティブを立ち上げ、多様な人材が活躍できる企業文化の実現に向けて、管理職も働き方をアップデートしていくための取り組みを始めています。
Q:残業時間の削減に向けて、どのような取り組みが有効なのでしょうか?
一人ひとりの意識の変革や業務の棚卸し・効率化・デジタル化はもちろんですが、現在テレワークやフレックスタイムなど場所や時間にとらわれない働き方と残業時間削減の相関性が高いことがわかってきています。
実際にフレックス勤務を導入している部署の約80%が「残業時間を削減することができたと」回答していますので、特にフレックスタイム勤務は残業削減に有効だと考えています。
残業時間の削減だけではなく、そもそもの総労働時間の見直しや、子育て、介護などライフステージの変化によって訪れる課題に対して多様な働き方を推奨していくことで、よりWell-beingに働けるような会社にしていきたいですね。
いかがでしたでしょうか?
今回は、「労働時間」をテーマに、丸井グループ産業医の日比野先生とワーキング・インクルージョン推進担当の方にお話をうかがいました。
労働時間の増加は作業効率を落とし、労働時間が増えるという悪循環が生まれます。削減に向けては個人だけでなく、チーム一丸で取り組む課題であること、また多様な働き方が残業時間の削減やWell-beingに働くためにも有効な手段だと教えていただきました。
次回のWell-beingに働きたい!もお楽しみに!
1日の労働時間が長くなると飲酒運転レベルの注意力になる!?
— 丸井グループ │ この指とーまれ! (@maruigroup) April 4, 2024
今回のテーマは「労働時間」
残業が多い人の特徴
繁忙期など忙しい時のパフォーマンスの保ち方
丸井グループの残業時間と削減の取り組み
などWell-beingに働くコツをインタビューしましたhttps://t.co/jE2WHAPds9 pic.twitter.com/JOjJg2eWIn