Future View
2022.3.24

K-POPの発展を支えるファンダムの存在とは

丸井グループでは、今後の経営にとって重要となるさまざまなテーマを考える場として「中期経営推進会議」をほぼ毎月開催しています。
今回は、「K-POPの発展を支えるファンダムの存在とは」というテーマで行われた、ライターの田中 絵里菜(Erinam)氏の講演の内容をお伝えします。

登壇者:田中 絵里菜

2021年4月に『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』を出版された田中氏から、世界中から注目を集めているK-POPの発展を支えている「ファンダム」について、韓国における「ファンダム」、さらに日本での展開などをお話しいただきました。

POINT

・「ファンダム」の特徴は、ファン自らがコンテンツをつくり出していること
・日本でも徐々に「ファンダム」の活動が活発化している
・日本の「ファンダム」がより活動の幅を広げるためには、「ルール」をつくることが必要

BTSなどの活躍で注目を集めている「ファンダム」


今までのアイドルコンテンツは、出演するテレビ番組を見たり、ライブに行ったり、CDを買ったりするように、企業がファンにコンテンツを与えるトップダウン式でした。一方で「ファンダム」は、企業から与えられたものを楽しむだけでなく、ファンがSNSでシェアをしたり、チャートを押し上げたり、広告を打ったりするなど、ファン自身が団結感を持ちながら自ら活動している点が特徴です。

ファンダムは、それぞれの活動ごとにチームをつくり活動することもあります。例えば、「ストリーミング総攻」は、ストリーミング再生数をどうすれば1位に押し上げられるのかを、ファンが戦略的に考えて活動しています。BTSの場合、各国で時差があるため、地域ごとにチームを組み、YouTubeなどの動画再生回数を上げるための戦略をファン同士でシェアし、計画を立てて実行しています。

「サポート」と呼ばれる活動では、アイドルなどがドラマ撮影をしている現場にフードトラックやお弁当を手配するなど、活動をサポートしています。韓国ではプレゼントとして、ライブや誕生日の際には「米花輪」という、花かざりの下にお米が積んであるものを贈る文化があり、有名なファンダムでは1トンから3トンほどのお米が集まります。この活動は、子ども食堂などご飯が足りていないところへの寄付にもつながっており、お米の重さがファンダムの強さを表します。好きな人の社会的な評価を上げるためというのも韓国のファンダムの大きな活動理由です。

さらにファンダム活動はオリジナルのグッズ製作にまでおよびます。例えば、ライブ中の映像などを撮影し、私設ファンサイトで写真をレタッチしてシェアをする「ホームページマスター」と呼ばれる人の場合は、自分の撮影した映像をDVDやCDにまとめ、トレーディングカードやカレンダー、うちわなどを封入した「シーズングリーティング」というものを年に2回ほど発売しています。また駅などに大きな広告を出す「応援・誕生日広告」も有名です。シーズングリーティングなどは大きな収益が出ますが、それをさらに広告などに還元しています。大きなファンダムになると、駅に留まらず、飛行機や電車にまでラッピングをするなど、企業クラスの応援に発展しています。

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日本でも「ファンダム」の存在が大きくなっている


日本では、アーティストの写真を勝手に撮って広告にすることが許されていないので、ルールをつくったうえでの活動が広がっています。最近象徴的だったのは、宮脇 咲良さんのHKT48卒業公演です。この公演では、韓国のマスター文化を取り入れて撮影可能の席をつくり、撮影した写真をインターネット上で配布することを許可した結果、ものすごい数の写真がインターネットに上がり、SNSで話題になりました。また、アイドルオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN」では、番組側が決められた規格であればプロフィール写真やロゴを加工して使用しても良いとしたところ、日本でも駅広告などが出るようになりました。

しかし、日本の場合、韓国のように駅などの公共機関に広告を出すことは、代理店を挟んでいないと難しいことが多いです。そのため、ファンが自分たちで広告を出せる場所を探して新しい広告の場所を開拓しています。例えば、お寿司が好きな「JO1」メンバーのために、スシローの待合室の映像に誕生日祝いの映像を流した事例もあります。このことがきっかけとなり、スシローが「JO1」のスポンサーになり、冠番組でCMを流すなど、ファンの力で新しいスポンサーを獲得するまでになっています。

また、日本でのファンダム活動もここ数年でいろいろ変化しています。あるアイドル練習生がバリ出身だったため、ファンダムが全国のインドネシア料理店に「スローガン」と呼ばれる推しの写真や名前が印刷された用紙を無料配布していました。すごいのが、練習生の情報と合わせてインドネシア料理など現地の情報を記載した冊子をつくり、国文化理解の促進がファン同士で行われたことです。このように、アイドルの社会的地位を高めるためのファンダム活動は徐々に変化し、出身地や医療関係への寄付活動なども頻繁に行われています。

インターネット上では、視聴者がまだ少ないコンテンツのファンが、ほかの人たちに広めるために、布教シートと呼ばれるわかりやすく推しポイントをまとめたものをつくってツイッターに投稿しています。人気のものだとリツイートが1,000を超えることもあります。日本では知名度が高くない新人K-POPアイドルグループの場合は、有名な歌番組になどに出て注目を集めるタイミングで、公式アカウントがファンを真似して自分たちの推しポイントや見てほしい映像をまとめる例もありました。

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ファンが安心して"遊べる"場所をつくる必要性


今の若い人たちに響くコンテンツは、人にシェアできる、自分が発信者となり貢献できているという実感があるということがすごく大事だと思います。ファンダムの場合、ファン発祥の文化を芸能事務所が踏襲していく例や、広告枠をファンが開拓して公式のスポンサーを獲得する例にまで発展しており、ファンダムの力はやはり偉大だと思います。

日本での今後の展望ですが、日本は韓国と違ってファンが勝手に写真を使用したり、自由に広告を出すことはできないからこそ、ルールをつくってその中でファンが安心して"遊べる"場所をつくる必要があります。どんどん自由に推しの応援活動をすることでき、ファンが団結して楽しめるプラットフォームやコミュニティ活動ができる場所があると、日本でも今後ファンダムの活動が活発になると思います。

登壇者プロフィール
田中 絵里菜(Erinam)

日本でグラフィックデザイナーとして勤務したのち、K-POPのクリエイティブに感銘を受け、2015年に単身渡韓。最低限の日常会話だけ学び、すぐに韓国の雑誌社にてデザイン・編集担当として働き始める。並行して日本と韓国のメディアで、撮影コーディネートや執筆を始める。
2020年帰国以降、フリーランスのデザイナーおよびライターとして活動を続け、2021に初の著書である『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』を出版。現地でK-POPの制作者に直接インタビューした本書は、K-POPムーブメントをクリエイティブやプロモーションの視点から切り込み、数々のメディアで話題に
過去に『日経エンタテインメント』『Rolling Stone』『pen』『ユリイカ』『ViVi』など数多くの媒体でK-POP韓国カルチャーについて執筆・取材を受ける韓国・日本に留まらず、現代のミレニアルズを惹きつけるクリエイティブやカルチャーについて制作発信を続けている。

■主な著書

K-POPはなぜ世界を熱くするのか|朝日出版社|2021/04/03

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