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人や環境に優しい洋服だけを集めたセレクトショップ「Enter the E」の代表を務める植月 友美さんの、ファッションに対する想いをおうかがいしました。前編では、子ども時代から丸井グループに勤めていた時期の失敗談など起業までの道のりをご紹介します。
もともと、子どものころからファッションが好きだったというのもあって、「大人になってもファッションで商売をしていくのだろう」となんとなく思っていました。祖父が洋品店をやっていたり、母親も洋裁が得意だったり、小さい頃から家に工業用のミシンが何台もあり、洋服との接点が幼少期からあったからだと思います。
高校を卒業してすぐ古着のバイヤーを始めたのですが「買付やグローバルビジネスを学びたい」と思い、4年間ぐらい留学しました。そこでファッションにおける経営や必要な知識を身に付けて、感性だけではなく、理論的に利益が出るような仕組みを学びました。デザイナーを志していた時期もあるのですが、「デザインは何のために必要なんだろう」というところから考えてしまうため「クリエーションは向いていない」と当時思いました(笑)
植月 友美さん
ニューヨークで働いていた時に病気をわずらってしまい、急遽日本へ帰国しました。「また海外に戻りたい」と思う気持ちもありましたが、「せっかくだからこの機会に、自分のやりたいことを日本で試せるかもしれない」「海外で学んだマネジメントやバイヤーの経験を日本の企業で活かすために、日本のファッションビジネス経営が学べる会社に入りたい」と考えるようになりました。帰国したタイミングでは、新卒や中途採用を募集する企業が少なったのですが、偶然丸井グループさん(以下、丸井)を知りました。
丸井に興味を持った理由は、若者のファッションだけでなく、歯科矯正や車の運転免許など、生まれた境遇に関係なくどんな方へもライフスタイル全般を支援していて「ビジネスの広げ方がすごくおもしろい会社だな」と思ったからです。企業に勤めることで経営のノウハウが学べる点や、私たち若者が困っているところに、手を差し伸べるような事業を行っている点に惹かれて入社を決めました。
2006年の秋に入社、最初の配属はレディスアパレルショップだったのですが、「自分の働いている会社を良くしたい」と強く思っていたので、「自分のやりたいことを実現するには、次に社内でどのような仕事についたらいいのか」と日々考えていました。やりたい仕事をやるためには、今いる場所で評価をされる必要があると考え、戦略を立てて日々業務にあたっていました。例えば、店長に自分の志や、実現したいこと話したり、フェアートレードやエシカルファッションが海外で拡大していることを伝えたくて資料にまとめて渡したりもしていました。今思えば生意気だったと思います。(笑)
入社して1~2年たった後、商品開発をしている部署に異動となりました。今まで学んできたことが活かせるスタート地点にようやく立つことができたと思いました。そのくらいの時期から丸井では商品を企画する段階で、「お客さまのニーズを聞いて仮説を立てる」ということを大切にしていたのですが、目の前の人の声をまずは素直に聞いて仮説を立てる手法がすごく勉強になりました。この時の経験は、マーケティングをする上で、ペルソナの設計や人の心理のインサイトをつかんだ商品開発ど、現在のビジネスにも役立っています。
入社して2年たち、「会社を良くしたい」という志はあるものの実務経験がなく、パフォーマンスをうまく上げられない日々が続きました。努力をしても20点、30点の結果しか出せなくて、悔しくて悩んで、「楽しいことをしよう」と自分の大好きな洋服をたくさん買いすぎた結果、多額の借金をつくってしまいました。
その時に、部屋を埋め尽くすたくさんの服を見て、自分の目先の欲に振りまわされ、自分のためだけに消費する虚しさを感じました。もともとビジネスを通じて「ファッションを世の中や人のためになるものにしたい」と思っていたのに、自分のためだけに生きることの虚しさと、何のために働き生きているのかわからなくなってしまうぐらいの人生のどん底にいました。どん底の中わいてきたのは「どうせ生きるなら誰かや何かの役に立ってから死のう」という気持ちでした。
「誰かのために生きよう」と思った時に、いろいろなビジネスのアイディアが出てきたのですが、ちょうどそのタイミングに社内で賞金がもらえる新規事業コンテストが開催されました。賞金が100万円だったので、「借金は返せるし、自分が考えていたソーシャルビジネスができるし、なんて良いチャンスなんだ!」と思い参加しました。やりたいことがたくさんある中で最終的に絞った企画は、「お客さまが育てたオーガニックコットンを使って自社で服をつくり、着てもらう」という、服づくりの過程を知りながら楽しめる参画型のファッションビジネスでした。利益計画を出すために、会社が所有するグラウンドでどのぐらいの綿花が育てられるかを調べ、本気で収穫高計算したりしました。
このテーマにいたったきっかけは、「自分の好きな服で世の中に貢献したい」「自分だけが楽しむ服ではなく、社会も良くする服や仕組みをつくりたい」との想いから、初めて洋服をつくる背景について調べたことでした。自然由来の素材であれば地球環境にも迷惑をかけていないと思っていましたが、コットンを安く早く大量に生産するために大量の農薬を使用し、そのせいで土壌を枯らしてしまったり、綿花を育てる農家の方が農薬により命を落とされていたり、皮膚が薬品でボロボロになってしまうことを知り、衝撃を受け絶望的な気持ちになりました。服が環境破壊とつくる人の犠牲のうえで成り立っている問題や課題の解決と、自分の人生の失敗をどう活かしたらいいのかと考えた時 に、「服を生産してくれている途上国の人や、次の世代の人に迷惑をかけない社会をつくりたい」と思いました。その結果、「コットンを自分たちでつくって着る【自産自着】にすれば誰にも迷惑がかからない」という発想になりました。
新規事業コンテストでは、敢闘賞をもらいましたが落選しました。その後も「ファッションビジネスの構造を変えたい」と強く思い、コンテストがあるたびに同じ内容をアップデートして応募していました。ファッションが成り立っている背景を知ってしまった以上、「これまで服をたくさん買うことで加担してきた分を服で恩返しをしたい」「構造を変えることで自分自身も救われたい」という強い想いがありました。今思えば、安直な考えだったかもしれないですが、「これをやることで会社も良くなり、世の中の困っている人も地球も助けることができる」という考えから、当時はどうしても丸井の中でやりたいと固執していました。
オーガニックコットンの【自産自着】の事業を諦めきれないものの、社内で実現するには自分の力不足で乗りこえられないことが非常に多くなかなかうまくいかず、また会社が求めている事業の大きさや利益のインパクトが自分の考えている規模感と差分があることを感じていました。会社では「社会を変えたいことを本音で話したら馬鹿にされるんじゃないか」と、心の灯を置き去りにして仕事をしていたのかもしれません。
一年、また一年と時間が過ぎる一方で、解決にいたらない大量生産・大量消費における労働搾取の問題や、地球温暖化のニュースを聞くたび、心のマグマがふつふつと煮えたぐっていました。「何をこんなにのんびりしてるんだ」と自分に腹が立ち、衣類が引き起こす環境破壊を解決する事業を立ち上げようともう一度勉強を始めました。グラミン銀行*のユヌスさんが来日された際、「誰でも社会を変えることができる、誰でも生まれながらにして社会起業家になれる」という言葉を聞き、心のマグマが一気に爆発し「私は何を待っていたんだ」と気づかされました。「待っていても社会は変わらないし、誰もやってくれない、やりがいより生きがいを大事にしたい」と思い、起業の道を選びました。
*貧困や生活困窮の状態にある方々に低利・無担保で少額の融資を行い、起業や就労によって貧困や生活困窮から脱却し自立するのを支援する銀行
「Enter the E」有楽町マルイ ショールームストア
「人や地球に迷惑をかけないで服を楽しめる社会をつくりたい」との想いで独立した後も、オーガニックコットンを自産自着する体験型農園の事業を本気で展開することにやはり固執していました。しかし、一番の盲点は一年で獲れる生産量で、体験で1年で生産できるオーガニックコットンは、一人1枚2枚のTシャツの量が取れるかどうかでした。参加者が毎日当たり前のように、人や環境に迷惑をかけない服を着ることができるようになる年月を想像するとぞっとしました。あくまで私がやりたいことは、地球やつくる人に迷惑をかけない社会の実現なので、この方法では何年もその方たちを環境破壊に加担し続けさせることになってしまうと思いました。
「もっと早く環境や人に配慮しているエシカルな服を提供しなければ」と改めて世界のマーケットを見渡した時に、日本における圧倒的な選択肢の少なさが目立ちました。改めて調べただけでも海外には700以上ものエシカル、サステナブルな服を提供するブランドがあるのに、日本は欧米にくらべて10年くらい遅れており、エシカルファッションの種類が少ないうえに、ほとんど流通していないことがわかりました。
当時、日本で流通しているエシカルファッションは環境ファーストで価格が高かったり、工程が人道的でも着ていく場所を選びそうなデザインだったり、デザインと品質や価格のバランスが取れていないため一部の人にしか買ってもらえないようなものが多い印象でした。
そのような背景から、人や環境に配慮している服が当たり前の選択肢として当たり前にみなさんに届けられるように土台形成をしようと決め、「まずは選択肢を増やす」と決めて、セレクトショップ「Enter the E」をスタートさせました。
<植月 友美>
「Enter the E」CEO。GEORGE BROWN COLLEGE(ジョージブラウンカレッジ)FASHION MANAGEMENT卒。18歳からファッション業界に入り古着のバイヤーなど経験。グローバルビジネスを学ぶため渡加、渡米。COLLEGE卒業後 NYで就労を経験、帰国後12年間(株)丸井グループでバイイング、商品企画、商品開発、マーケティングなどを担当。2009年、ずさんなファッション業界の環境破壊を目の当たりにし、人や地球に迷惑をかけずに洋服を楽しめる社会をつくることを決意。人生をかけて、「地球と人が服を楽しめる社会の両立」の実現に挑む。
<次回後編は、8月下旬に更新予定!>
後編は「Enter the E」に込めた想いやセレクトしているブランドの紹介、植月さんの今後やりたいことをお届けします。植月さんの行動力や熱い想いに心を動かされ、植月さんや「Enter the E」のことがもっと知りたいと思いました。次回もお楽しみに!
\本日公開/
— この指とーまれ! (@maruigroup) August 20, 2021
「Enter the E」CEOの植月 友美さん(@EntertheE1)にインタビューさせていただきました行動力のある方で、植月さんの熱い想いに強く心ひかれました前編では、起業までのストーリーをお届けします#enterthee #サステナブルファッション #エシカル消費 https://t.co/08vuP0W7xu
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