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食料の生産・製造に関する一連の活動で排出される世界のCO2などの温室効果ガスは、最大で総排出量の37%。そして、その約半数を占めるのが畜産由来といわれています。脱・肉食は地球にもやさしいということで、日本でも大豆などを主成分にした「代替肉」などのサステナブルな選択肢を見聞きするようになってきました。ビーガン歴7年の「ビーガン王子」ことアレックス・デレチさんと、丸井グループ社員2名が、未来の「食」を糸口に共創の可能性を探ります。
アレックス:今、僕たちは本当に経験したことのない時代にいます。どんどん変わっていくし、この先に何があるかもわかりません。なので、今どう動くかということがこれからすごく重要になってくると思います。その中で気軽に自分の行動に取り入れられるのが、食べること。それで僕はビーガンという生き方を広げたいと活動しているんです。
齋藤:アレックスさんのおっしゃる通り、今、私たちは時代の転換期にいると思います。私がビーガンについてきちんと考えはじめたのは2017年でした。私はビーガンが海外に多いのは宗教の問題だと思っていたんです。私は海外に住んでいたこともあって、食事と宗教というのはすごく結びついていると思っていたので。それで、きちんと調べていくうちに、宗教上の理由もあるけれど、それ以上に気候変動に対しての気持ちからビーガンやベジタリアンを選んでいる人が多いと知って、それがけっこう衝撃で......。
アレックス:動物をいっぱい育てることって、環境への負荷が非常に大きいです。家畜を育てる過程で排出される温室効果ガスは、自動車や電車、船、飛行機などの交通手段で排出される量よりも多いんです。
松山:私は、正直、これまでビーガンについて全然知識がなかったんです。世の中には「絶対にお肉を食べてはダメ」というような過激な意見のほうが取り上げられていたような気がします。でも、調べてみると、週に1日だけ動物由来の食事を摂らないとか、菜食にもグラデーションがあって、自分で気軽にできることもあるんだということに気づけました。
齋藤:アナログな時代だったら、例えばアレックスさんと交流があれば、ビーガンのことを知ることができたけれど、交流がない人は知ることができなかった。でも、今はSNSなどでその情報が自然に入ってきやすくなったと思います。日本人もビーガンに拒絶反応があるというより、普段の選択肢にない、単に知らないだけの人もけっこう多いんじゃないでしょうか。
アレックス:本当におっしゃる通りだと思います。日本人の意識が遅れているというよりは、そもそも日本に入ってくる情報が少ないと思いますね。今年の2月、『ジョーカー』でオスカーを受賞したホアキン・フェニックスがスピーチで、動物畜産と地球温暖化の関係について5分くらい語ったんです。こんな風に、有名な俳優が公の場で環境問題などについて語ることは、とても影響力があると思います。そういう話をしてくれる有名人とか、情報が増えれば、皆さんも動くことができるようになると思います。
松山:地球温暖化への関心ということで言えば、15歳で環境活動を始めたグレタ・トゥーンベリさんの登場も大きかったと思います。今まで日本では、どちらかというとあのような活動をしている人は「意識高い系」と呼ばれていたと思いますが、グレタさんのような将来世代の人の発信は突き刺さりますよね。
アレックス:グレタさんは特別ですね。たった一人のメッセージなのに日本まで届いているというのがすごいです。僕は以前から「一人だけ変わってもどうせ何も変わらないでしょ」ってよく言われるんです。でも、週に1回だけバーガーを食べないという選択をするだけで、2カ月分のシャワーの水を節約することと同じになるんですよね。牛を育てるのには、それだけの水が必要ということなんです。だから、一人でも十分環境に影響を与えられるんだって実感すると、楽しくなるじゃないですか。
松山:私は今回アレックスさんとお会いできると知って、ビーガン食について勉強するようになりました。初めてハンバーガー屋さんでソイパテに変更してみました。絶対においしくないだろうと思い込んでいたんですが、食べてみたら、言われなかったら本当に気づかないくらいおいしくて。自分の健康にとっても良いし、環境にも良いのなら、次からはこっちにするなと感じたんですよね。
齋藤:この1カ月ですごく変わったんだね(笑)。日本で困るのは、どの食材を選ぶのが自分に一番フィットするかがわからないということ。その食材の由来がわからない時もあるし。本当に地球に良いもの、自分が選びたいものがどれなのかというのは、もっと選びやすくなったら良いなと思います。
松山:ビーガン食を食べられるようなお店が近所にないんです。それで自分でつくろうとしても、和食では鰹だしの文化とかが自分に根づいちゃっているので、自分でつくるのにもまだハードルが高いと思いましたね。
アレックス:日本に来た時に調べたら、ビーガンレストランは全国で200店舗くらいだったのですが、今年調べたら1,300店舗以上ありました。2年半で6倍以上になったというのはすごいことです。だから松山さんの近所にもすぐできますよ。自分でつくる場合でも、今はネットでレシピを調べられます。食材のつなぎに使われる卵ですが、代わりにつぶしたバナナを入れると科学的に同じような効果があるとか。
齋藤:そうなんですね!知りませんでした。
アレックス:"おいしくない代替品"ではなく、本当に同じようにおいしいものをつくれる。そういうことを発見すると楽しくなります。子どもの時は毎日牛乳を飲んでいたのですが、ビーガンになってからは豆乳、アーモンドミルク、オーツミルク、ライスミルクを飲んでいます。牛乳をやめたら、逆にこんなに飲む種類が増えたというのも楽しい。できる料理もどんどん増えていくし、本当に世界が広がった。見たことも聞いたこともない野菜もたくさんあって、かえってすごく豊かな食生活になったと思います。
齋藤:私はコワーキングスペースにもよく行くのですが、そこには外国人が半分くらいいて、すごく多様だし、ネクストスタンダードで生きている人が多いです。働き方もフリーランスに近い形で自分の得意なことを仕事にして働いている人たちです。そういう人たちのライフスタイルの中の「食」という部分を切り出すと、ベジタリアンに近かったり、そもそも将来に対して良いアクションを取りたいと思っていたり。もしかしたら、こうした意識の高い人たちは、もともと食にあまり関心がなくても、結果的に食にも気を使うことになるのかもしれないと思いました。
アレックス:さっきも言ったようにビーガンについても環境問題についても、日本はまだ情報が足りていないと思います。でも、日本人が動き始めるとすごいことになると思っているんです。例えば鉄道。ヨーロッパに比べて日本は遅れて始めたのに、新幹線で世界一になっている。だからビーガンでもそれができるんじゃないかと勝手に思ってるんです。日本は環境問題の最前線に立つことができると思います。それは本当に楽しみです。
松山:スーパーで売っているパックされたお肉って、どうやってそこまで来たのかまったくわからない状態なので、食べることに罪悪感も何もないんです。
齋藤:海外のブッチャー(精肉店)に行くと、肉がかたまりで吊るされているじゃないですか。それにいたるまでの工程が、日本ではなかったことになっている。すごくきれいな状態しか知らないから。
アレックス:確かにそうですね。毎年600億くらいの動物が人間のために殺されています。殺し方が非常に工場的で激しいです。ネットでその映像を見てビーガンになった人も多いです。アメリカではインポッシブル・バーガーというすごい商品ができたのですが、それが日本に来たら皆びっくりするだろうと思います。エンドウ豆や大豆、ジャガイモなどが原材料で、本当に健康的で、しかも肉の味がする。肉汁も出る。それこそ罪悪感はゼロ。健康の面でもアニマルウェルフェア*1の面でも、環境の面でも優秀な、植物でできた肉。そういうものが増えたら良いなと思います。
齋藤:私は仕事でD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)*2ブランドの担当をしているのですが、コスメなどでも原料にこだわっているブランドは、大前提として動物実験をしていなかったりします。ブランディングとしてサステナビリティの考えが入っている企業はすごく増えている印象があります。ファッション業界では毛皮というのが一番わかりやすいと思いますが。
アレックス:ハイファッションでも毛皮は使わないと言っている会社が多いですね。それはアニマルウェルフェアの面でもそうなのですが、処理する時に二酸化炭素をたくさん排出するんですよ。だから「脱・動物由来」は食だけでなく、コスメやファッションにもつながりますよね。
松山:靴にしても、革は高級で、それ以外の素材は安くてちゃっちいみたいな意識ってありますよね。だからそうじゃないんだ、という打ち出しというか認識が必要ですよね。
アレックス:特に靴なんかは、まだ難しいところですね。でも、ビーガン革のブーツを出しているブランドもあります。めっちゃかっこいいです。安っぽいような感じは全然なくて、高品質。そういう商品も増えています。今日の僕の靴はリンゴ。
齋藤:リンゴの皮?(笑)
アレックス:リンゴの繊維を使ったものです。こういう新しいテクノロジーもどんどんできています。よりサステナブルになる。そういうものがもっといろいろできて、いろいろなところにあって買いやすくなったらうれしいですね。
齋藤:元丸井グループの先輩が、サステナブルでトレーサビリティのある洋服だけを扱うセレクトショップを立ち上げて、マルイ店舗にも期間限定で出店していました。私の夢は、5年後くらいにはすべての服をそこで買ったものにすること。バーコードを読むと、どの工場から来たのかを全部追えるようになっているブランドなどを扱っているので、それに切り替えるのが目標。ファストファッションの時代には、私も信じられないくらい大量の服を持っていました。今は徐々にミニマリストをめざしています。必要な分だけをできるだけ長く使いたいです。
アレックス:「足るを知る」ですね。
松山:私はマルイ店舗で、今回のテーマとなった「食」に関するイベントを企画したいです。別に「意識高い系」ではなく、普通の人たちが「私もこういうことから始めれば良いんだ」という気づきになるようなイベントです。そこでは発信力というのがすごく大事なので、アレックスさんのように活躍されている方と一緒にやるとか、いろいろな人と手を取り合うことが必要かと思います。
アレックス:つながることは重要ですよね。環境問題とかビーガンとか、一人よりは大勢でやったほうが楽しいはず。皆で盛り上がるようなことを考えたいですね。丸井さんと一緒に、将来を見据えた新しい価値観やサービスを提供していければうれしいなと思います。
松山:ぜひやりましょう。
*1 アニマルウェルフェア:動物福祉。おもに家畜動物の飼養管理の仕方として使われる言葉。動物たちが自然に行動できるように、快適な環境を整えること。
*2 D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー):メーカーやブランドが自社で企画・製造した商品を、従来の小売業者などを介さずに、自社で制作したECサイトを使って直接(Direct)消費者(Consumer)に販売するビジネスモデル。
撮影場所:玄米・野菜・大豆を中心とした、NEAL'S YARDが提案するビーガン和食レストラン「BROWN RICE」。四季を大切にする日本古来の食の知恵を生かし、体も心も健やかに美しくなる新しい和食のかたちを追求している。
対談日:2020年4月6日
ビーガンとは、単に動物性食品を摂らないことから、動物性由来のもの(シルク、ウール、革、毛皮など)を使用しないライフスタイルまでを指します。トークセッションには登場しなかった、ビーガンに関するプチ情報を以下にご紹介します。
ビーガンを1年続けるとCO2排出量はどのくらい削減できる?
3,322㎏です。アレックス・デレチさんのHPのコンテンツ「ビーガンの電卓」では、ビーガンを続ける期間の長さによって、節約できる地球の資源の量が計算できます。CO2のほか、「水」「穀物」「森林の面積」「動物の命」への貢献度が一目瞭然です。
もっと知りたい! ビーガンのこと
ビーガンについてもっと詳しく知りたい方は、こちらの本がおすすめです。『チャイナ・スタディー』(グスコー出版)、『食事のせいで、死なないために』(NHK出版)、『フォークス・オーバー・ナイブズに学ぶ超医食革命』(グスコー出版)などがあります。それぞれの概要は、アレックス・デレチさんのブログ「おすすめのビーガンの本」に掲載されているので、ご覧になってみてください。
トップアスリートにビーガンが多いって本当?
それを知るのに良いドキュメンタリー映画があります。ジェームズ・キャメロンやアーノルド・シュワルツェネッガーらがエグゼクティブ・プロデューサーを務める『ゲームチェンジャー:スポーツ栄養学の真実』です。自転車競技の五輪メダリストやウェイトリフティングの全米最高記録保持者、全米ボクシングヘビー級選手など、そうそうたる顔ぶれのアスリートたちが植物性中心の食事の効果を雄弁に証言しています。
皆さん、ビーガン、やってみたいと思いましたか? トークセッションの中でアレックスさんが教えてくれた通り、今、日本ではビーガンレストランが急増中です。ヘルシーで地球にもやさしいビーガン。まずは一度、レストランやカフェで体験してみてはいかがでしょうか。
新しい記事を公開しました。ぜひご覧ください。#D2C #サステナビリティ #共創 #将来世代 #食の未来https://t.co/rkfwsuTWFE
— この指とーまれ! (@maruigroup) 2020年6月29日
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