Talk Forum
2021.10.1

若手起業家が、エシカル就活を通じてめざす未来

  • 勝見 仁泰
    株式会社Allesgood
    代表取締役 CEO
  • 中村 紘也
    D2C&Co.株式会社
    共創メディア・事業管理担当(2015年度入社)

丸井グループが主催するFuture Accelerator Gatewayは将来世代である大学生・大学院生から参加者を募り、丸井グループの社員とともにチームを組んで新規事業を創出するイベントです。2020年12月から2021年3月中旬まで開催された同イベントに参加した学生起業家・勝見 仁泰氏に、メンターとして携わった丸井グループ(D2C&Co.)社員の中村 紘也が、これからの将来世代と企業のあり方について聞きました。

Future Accelerator Gatewayが教えてくれたこと

中村:勝見さんは、2020年12月から2021年3月中旬まで、Future Accelerator Gatewayに参加し、私はメンターとして勝見さん率いるAllesgoodチームのメンバーになりました。そして3カ月の間、勝見さんのビジョン実現に向けて、ディスカッションや対話を通じてビジネスプランのブラッシュアップに携わらせていただきました。その結果、勝見さんは「エシカル(倫理的な)就活」というオリジナリティのある考え方で、現在の事業を実装するまでにいたっています。あらためてエシカル就活について勝見さんから説明をお願いします。

勝見:「エシカル就活」というのは、学生が人や地球環境、社会に配慮した企業を選ぶ就職活動のことです。私が代表取締役を務めるAllesgoodは、この「エシカル就活」の支援をおもな事業内容としています。2021年5月からは、SNS型の採用プラットフォーム『エシカル就活―ETHICAL SHUKATSU―』を開設し、社会課題に取り組む学生と企業をつなぐサービスを提供しています。

中村:Future Accelerator Gatewayに参加してみていかがでしたか?

勝見:このイベントでは、最後に審査員を前にピッチ(短いプレゼンテーション)を行い、優れた事業計画には優秀賞が贈られるのですが、私はこれを「受賞できるはず」と自信満々でした(笑)。というのも、イベント参加前に「エシカル就活」のニーズをリサーチしようと、社会課題の解決に取り組む企業と学生の合同イベントを開催したところ、150名もの学生が集まってくれて、すごく好評だったんです。「何これ?めちゃくちゃ求められているじゃん!」「絶対ビジネスとして成立する」って確信していたんです。ところが...。

中村:参加した4チームのうち2チームが受賞しましたが、Allesgoodチームは選ばれませんでしたね。私も勝見さん同様、絶対受賞できると思っていたのでショックでした。二人とも私たちのチーム名が呼ばれるものと、結果発表をニヤニヤしながら待っていたのに(笑)。

勝見:今考えれば予兆はあったのかなと思います。ピッチの直前に、イベントを共催したライフイズテック(株)*の代表取締役でメンターをしてくださった水野 雄介さんにプレゼンを見てもらったんですよね。我ながら最高の出来だと思ったのですが、水野さんは一言、「つまらない」と。

中村:私にとってもまさかの一言でした。振り返ってみると、良くも悪くも完璧に仕上げすぎてしまっていて、勝見さんのパワフルさが活きてないし、ワクワク感が消えてしまっていましたね。論語とそろばんだけじゃなくて、ワクワク感が必要だということを思い知らされました。その日の夜、緊急会議をしたのですが、勝見さんが全ピッチ内容を修正するという決断をして。

勝見:人生であんなにどうしようって気持ちになったことないですよ。プレゼン資料も今までのものを全部捨てて、自分なりにワクワクするものを一生懸命考えて、一から資料をつくり直しました。

中村:いや、あれには驚いた。修正作業にあてられるのはわずか1日だけだったから、せいぜいできることは、資料の半分を残して、残りに修正を加えることぐらいだろうと思っていたので。それをすべて変える決断をしたところに、経営者としての力強さ・粘り強さをあらためて感じましたね。

勝見:それでも優秀賞には届かなかったんですよね。でも、ピッチでは負けたけど、事業内容への自信が揺らぐことはありませんでした。人生初の悔し涙にくれながら「この事業を絶対に成功させてやる」と心に誓いました。

中村:今思えば良い挫折ですよね。あの発表で共感してくれた人たちが仲間になってくれましたし、Allesgoodが事業を進めるきっかけになりましたね。

勝見:うれしかったこともありました。審査員のお一人、丸井グループの青井浩社長からピッチの内容をほめていただいたことが、その後の励みになりました。今では、自分を信じて絶対に諦めないことが一番大事だと思っています。

* 学びを科学するLX(ラーニング・エクスペリエンス)というコンセプトのもと、デジタル人材育成に取り組むEdTechカンパニー。

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サーフィンとスタートアップは似ている

中村:ところで、「エシカル就活」の着想にいたった経緯もあらためて教えてください。

勝見:私の実家は八百屋で、商売が人とのつながりや家族のしあわせなど、金銭以外のものももたらしてくれることを感じて育ちました。そのような環境だったので、幼少期から事業家に憧れていました。高校3年生の冬休みに東南アジアへ自分探しの旅に出たんです。そこで目の当たりにした貧富の格差に衝撃を受けました。この経験からビジネスを通じて社会課題の解決をしたいと思うようになりました。大学では文科省が展開する留学プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN」に応募し、「途上国の特産品を活用した有機化粧品事業」といったテーマが採用され、ドイツ、コスタリカ、アメリカに1年間留学しました。コスタリカの有機農園のハーブを使用したシャンプーなどを扱うビジネスだったのですが、事業化を目前にして、コロナ禍の影響で頓挫してしまいました。

中村:「エシカル就活」の前に、「有機化粧品事業」で起業できていたかもしれないんですね。

勝見:それで、自分も留学から帰国後、「就活」をスタートさせました。自分は、気候変動と地方創生に関心を抱いていましたが、『気候変動 企業』と調べても電力系、素材系でほぼ決まった企業しか出てこなかったんです。丸井さんとみんな電力さんが行っているエポスカードの取り組みにもまったくリーチできませんでした。しかも、社会課題解決を軸に就活する友人にヒアリングしたところ、多くの人が同じ悩みを抱えていました。つまり、社会課題解決に対する想いや行動は企業も学生も同じなのに、シンプルに、学生のニーズと企業のニーズが合ってないんですよね。

中村:確かに。今の就活サイトって企業がどれくらい社会課題に真摯に向き合っているのかがわかりづらいですよね。業界業種、給与福利厚生が中心で社会課題に対しての取り組みはわからない。それなら自分でつくろうと着想したのが「エシカル就活」なんですよね。

勝見:そうです。私のまわりには学生時代に留学をして、ジェンダーやダイバーシティ&インクルージョンなどを学んで社会活動に取り組んでいた友人も多かったんです。そんな彼らが、従来の業種や職種を軸にした就活しかできないので、就活の段階でやる気や情熱を失ってしまう姿を見ていました。企業の社会課題への取り組みの情報が不足しているから社会課題を軸にした就活ができない。自分らしいキャリアデザインができていない状況にすごく違和感を覚えました。

中村:なるほど。Z世代の学生だからこそ得られた気づきだったんですね。

勝見:私を含め同世代の多くの学生や企業が社会課題解決に向き合っていく、そんな未来により近づけたいというモチベーションで事業をしています。これがあるから諦めずに前に進めると思っています。

中村:すばらしいですね。ところで、勝見さんはサーフィンが趣味だったと思いますが、最近は忙しくてサーフィンをする時間もないんじゃないですか?

勝見:いや、そんなことないです。毎朝、家の近くの海に出てますよ。そういえば、先日ボードに座ってプカプカ浮いていたら気がついたことがあったんです。「あ、サーフィンとスタートアップって似ているな」と。

中村:サーフィンとスタートアップですか?

勝見:そうです。サーフィンとスタートアップの共通点は、「不確定要素の多さ」なんですよね。例えば、大きくて良い波というのは、セットになって2、3本連続してくることが多いんですが、誰もがその中で最も良い大きな波にライディングしたいと思うものですよね。ただ、実は1本目ではなく、その後ろに控える波の方が整っていて綺麗だったり、皆が1本目を選ぶので人がいなくて空いていたり、と毎回波に乗る前に洞察力が求められるんです。
そして、自然のスポーツなので、良い波が二度と来ない可能性もありますよね。次の行動を起こすには、その場の状況を俯瞰して把握することが重要です。「良い波をすばやく洞察し、行動する」ということは、まさにスタートアップ経営で求められる"タイミング"と"意思決定のスピード"なんです。

中村:確かにスタートアップはこれまでにないビジネスモデルを興そうとするものなので、不確定要素が多いというのは共通していますね。勝見さんは今、「エシカル就活」ビジネスという波を乗りこなそうとしているわけですね。

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世界に通用するAllesgoodへ

中村:サービスが実装されスタートしましたが、いま感じているやりがいや課題は何ですか?

勝見:学生のユーザーから、当社のサービスを使って「インターンや内定につながりました」という声をいただくと、事業をやっていて良かったなと思いますが、それと同時に企業が「今、学生さんはエシカルを求めているので、ぜひエシカル就活の参加企業として一緒に社会貢献をしていきたいです」と仲間になっていただけた瞬間にやっぱり一番やりがいを感じます。それは、Allesgoodがめざしている目標が、企業に優秀な学生を採用いただくということではなくて、企業に社会課題解決の重要性に気づいてもらい、社会全体のサステナビリティを加速させることだからです。

中村:Allesgoodと同じ想いを持つ学生だけではなくて、企業側の意識も変わってくれて、社会課題に積極的に取り組む人々が増えていくことにやりがいを感じるのですね。逆に、課題に思うことはありますか?

勝見:企業の担当者と話していて、価値観が伝わらない時に「どうやったら伝わるんだろう」というもどかしさがあります。特に、統合報告書などでサステナビリティについて触れていながら、実際に話をすると「そうは言っても、サステナビリティとビジネスを結び付けるのは難しいから」と消極的なところも多い。私は、自分の大切な人に紹介できる企業しかサイトには掲載しないという方針です。そのような企業を一つでも多く増やしていくことが課題でしょうか。それは、巻き込み力がないという私個人の課題だとも思います。

中村:勝見さんは、巻き込み力はあるんじゃないかな。実際、私も巻き込まれたし(笑)。ただ、企業経営の観点からいえば個人の力には限界がある。経営者が企業としての限界を決めてしまうのではなく、経営者を超える企業になってほしいです。だから勝見さんとは別の能力を持った人材の活用や採用が重要になってくると思います。難しいとは思いますが、仮に勝見さんが経営から離れたとしても機能する組織にしていく必要があると思います。

勝見:まさにその通りですね。今は、メンバー一人ひとりの良さが活きているとは言えません。メンバーそれぞれの強みがAllesgoodの企業カルチャーを形成していくというのが理想ですね。

中村:最後に、今後の展望や抱負を聞かせてください。

勝見:ゆくゆくはグローバルで活動していきたいと思っています。社会課題解決のためには、世界全体が変わらないといけないと思っていますし、世界を変えるためにはビジネスが変わらないといけないと思っているので、さらなる事業展開が必要だと感じています。

中村:どういった事業展開を考えていますか?

勝見:特に、海外にはAllesgoodのコンセプトに共感してくれる企業が多いと感じるので、海外企業にも提携先を拡大していきたいです。

中村:実際に海外企業ともコンタクトを取っていますか?

勝見:定期的に取っています。外資系企業の日本支社から本社を紹介してもらったり、そんな海外企業の横のつながりで当社の存在を知ったという企業から直接連絡をもらったりしています。

中村:世界にAllesgoodのどのようなところを見せていきたいですか?

勝見:私たちの掲げる、社会課題解決という目標に向き合っている姿勢を見てもらいたいです。そのためには、ユーザー数や売上といった具体的な数字など、ある程度の規模感は大事になってくるので、今のビジネスをどのようにリデザインするのかを考えていかないといけないですね。

中村:Allesgoodがグローバルで活躍するようになったら、まずどんなことを成し遂げたいですか?

勝見:市場原理主義のおもしろいところって、競争する点だと思うんですね。それは社会課題解決においても同様で、競争が起きると、どんどんイノベーションが生まれる。例えば、海洋プラスチックを回収する場合、あっちのコストが低い、いやこっちのほうが低いってなったらどんどんその解決に近づくと思うんです。海外の企業は、社会課題解決をビジネスとしてとらえているところが多いので、そうした潮流を日本はもちろん、世界にも拡げたいですね。そして、企業と将来世代が、社会課題解決に向けて未来を共創していく環境をつくっていきたいと思っています。

勝見 仁泰

株式会社Allesgood 代表取締役 CEO 1998年生まれ。高校時代に訪れた東南アジアで先進国と途上国の経済格差に関心を持ち、社会課題解決を志す。ドイツへビジネス留学、途上国の特産品を活用した有機化粧品D2C事業をドイツ人と共同創業。帰国後、パタゴニア日本支社、ソフトバンク、ビズリーチなどでインターンを経験。既存の就活に対する疑問から、Allesgoodを創業。社会課題に取り組むエシカル企業と優秀な学生をつなげる社会課題版LinkedIn「エシカル就活」を運営。

中村 紘也

D2C&Co.株式会社 共創メディア・事業管理担当(2015年度入社)国分寺マルイ、ららぽーと立川立飛にて接客を経験後、丸井グループに異動。成長領域のリサーチ及びスタートアップ企業への投資部門(現 共創投資)の立ち上げに参画し、EC関連・再生エネルギー・プログラミング教育など幅広いテーマでの投資を経験。2020年より新規事業として国内初のD2Cブランドキュレーションメディア5PM Journalの立ち上げ、運営を担当。

  • エシカル就活 ―ETHICAL SHUKATSU―
  • 社会課題テーマから企業と学生がつながる採用プラットフォーム『エシカル就活』
  • https://ethicalcareerdesign.jp/
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