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Podcastの人気番組「COTEN RADIO」を運営し、世界史のデータベースの開発をめざす株式会社COTEN(コテン)。同社で取締役兼CGO(Chief Genius Officer・最高才能責任者)というユニークな肩書を持つのが、「たかちん」こと佐野貴氏です。佐野氏のCOTEN入社のきっかけから才能とは何か、スタートアップ企業の組織や経営と才能のかかわりなど、興味深いお話をうかがいました。
―株式会社COTENの経営に参加されたきっかけは何だったのでしょうか。
佐野:知人から「深井龍之介(同社代表取締役CEO)っていうおもしろい人物がいるので会ってみる?」と言われて。それで会ってみたところ、彼から「会社のプロモーションを手伝ってほしい」と誘われました。当時、僕はタレントマーケティングのプロデュースなどを行う会社を経営していたので、じゃあやらせてくださいと返事をしたのがきっかけです。当時、龍之介はTwitterもやったことがなかったので、まずは、それをやってもらうところからスタートしました(笑)。
―そうだったんですね。
佐野:本人はTwitterにまったく興味がなかったみたいです。でもメディアに出る人だからやった方が良いってすすめたんです。その後、ファンのニーズを知るために、ファンコミュニティやオフ会をどんどん企画させてもらって。半年くらいたったころ、龍之介、ヤンヤン(「COTEN RADIO」のパーソナリティで同社歴史調査部の楊睿之氏)、僕の3人でミーティングをしていたら、龍之介が社員を入れたいって言い出したんです。その流れで「たかちん(佐野さんの愛称)は今忙しいの?」と聞かれました。そのころには、経営していた会社もある程度の仕組みができ上がっていて、僕がいなくてもまわり始めていたんです。それで「いや、忙しくもないから何か新しいことやろうかなと思っている」と言ったら、「それなら(COTENに)入ってよ」って。そんな流れでしたね。「たかちんいいじゃん、ヤンヤンもそう思うよね」と。で、ノリと勢いで入りました(笑)。
―入社後、佐野さんは取締役と兼務でChief Genius(才能) Officerを務められています。
佐野:世の中的にはCxOは、「x」に責任を持つ人なので、そういう意味ではCGOは、社員の才能(G)を引き出すことに責任を持つ役職だと理解しています。
―CGOというのは、おそらく世界で初めての役職だと思うのですが、具体的にはどのような役務なのでしょうか。
佐野:CGOは、組織において全社員の才能を引き出すことに加え、その才能が活かされる環境をつくり、会社のパフォーマンスの向上につなげることが役割です。なぜ、才能にフォーカスしたのかというと、才能は事業においても、個人にとってもレバレッジが効くんですよね。なので、個人にとっても会社にとっても「しあわせ」なことだと思っています。また、才能は個人の「欲求」と強く紐づいているため、個人と会社の欲求をマッチングさせるという視点で考えています。具体的な仕事の内容としては採用、人材配置、人材開発、組織設計、経営を担当しています。
―先だってPodcastで求人募集をしたところ、500名ぐらい集まって大変だったと聞きました(笑)。
佐野:そうですね。530名ぐらいの方から応募がありました。「COTEN RADIO」のおかげですね。実際、ご縁につながったのは正社員が4名、そのほか業務委託の方が数十名です。面接に関しては、僕は一次面接から出席し、全員と面談させていただきました。
―全員とですか!
佐野:亡くなられた株式会社ビズリーチの多田(洋祐)さんからいただいた最後のアドバイスが「一次面接は、たかちん自身がずっと担当するべき。今後もやめないほうがいいよ」でした。多田さんもマネジメント層の面接は一次面接から参加されているとのことでした。あの規模の会社で一次面接から参加されていることに衝撃を受けたのですが、一次面接こそ、人をちゃんと見られる場所なんだということだと思います。二次面接、三次面接は、正直、入ってくれる人がこの会社でいいのかを確認する場でしかないと思っています。一次面接で入ってほしいかどうかを見極めるのが僕の仕事です。なので、二次、三次面接では「あなたの人生にとってCOTENに入ることが『しあわせ』かどうか」ということしか聞かないです。
―一次面接で応募者の才能のあるなしを見極めるのですか。
佐野:僕は才能の定義を、「ついついやっちゃうこと」としています。だから才能が「ない」人はいないんです。僕がしているのは、その人が持っている欲求に対して、ついついやっちゃう思考や行動のくり返されるパターンを見極めて、COTENが求めているポジションとマッチするかどうかを判断することです。同時にその人の才能をどこに配置すれば、すごく活躍してもらえるかということも考えています。
―丸井グループでは、「お客さまのお役に立ち続ける『人の成長=企業の成長』」を経営理念に掲げています。社員一人ひとりが自身の「才能」や「強み」を自覚し成長することは、今後の働き方において、非常に重要だと感じると同時に、企業側も社員一人ひとりの「才能」を活かすという視点が求められていると思います。才能を活かしていくために、COTENではどういった人材育成を行っているのでしょうか?
佐野:僕らは、「意思決定者を育てる」という目標を持っています。意思決定者が何なのかというと、自分で考え実行して改善することができる人のことです。意思決定者を育てるにはフェーズが存在するのですが、フェーズを達成させるためには、スキルの取得と環境整備が必要です。このスキルの取得と環境整備の一番土台になるのが心理的安全性です。ここを整えながらスキルを教えてあげることで自信を持って仕事ができるし、福利厚生や働きやすい環境を用意することで安心して働けるようになります。働く人たちのモチベーションを維持しながら、意思決定者に育てるまでのフェーズを設計してから、人材育成をスタートしています。
―「意思決定者を育てる」という観点がおもしろいですね。
佐野:そうですね。そして、この意思決定者に育った人は「才能を開花していこう」って形にしています。
才能の開花というのは、会社にとっては、けっこうすごい決断なんです。苦手なものを捨てて良いという決断であり、削ぎ落とす行為とも言えます。削ぎ落とした時に、個人としては凸凹になるんですね。そうすると今度は、凹を埋めてくれる存在が必要となります。その凹を埋める存在がそのほかの意思決定者になるわけです。また、アカデミー生という、成長中の若い人たちもいて、彼らにも才能開花の手伝いや、その人が苦手とする分野をサポートしてもらっています。
―苦手なことにチャレンジする必要はないということですか。
佐野:実は、かつては、最初から苦手を削ぎ落として良いというマネジメントをしていたのですが、そうすると誰の才能にも当てはまらない業務が出てきてしまったんです。そこで楽天大学学長の仲山進也さんの「加減乗除の法則」というフレームを使わせていただくことにしました。まず、「加」で苦手なこともやりつつ、量をこなしてできることを増やします。次のステージの「減」では苦手な仕事を減らして、強みに集中します。「乗」では磨き上げた強みに、別の強みを掛け合わせ、そして「除」では、一つの作業をしていると複数の仕事が同時に進むようになるというフレームですね。僕らは特に「加」と「乗」にコミットしたいと思っています。やはり「加」は、さまざまな仕事を経験しないことには、自分の才能がどこにあるのかが判断できないため、さっき言った意思決定者に育つために必要なプロセスだと思っていますし、苦手な仕事であっても社会人として最低限のスキルは必要です。経験を積んで、才能開花のタイミング、つまり人を頼っていいポジションになったら「減」、苦手を削ぎ落としていっていいよという風に進めています。
―そもそも才能に興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか。
佐野:きっかけは、二つあります。一つ目のきっかけは、タレントプロデュース系のマーケティング会社を運営していた時の経験ですね。プロデュースする芸能人や起業家の才能を見ながら、どのようなプロモーションでインフルエンサーにさせるかを考えるのが仕事でした。そこで「才能って何だろう」っていうことに着目して勉強し始めたことがきっかけです。
もう一つのきっかけは、自分というものがわからなさすぎて、「自分自身のアイデンティティを見つけたい、確立させたい」という思いがすごく強くなって自分発見のために才能を勉強しました。
平野啓一郎さんの『私とは何か――「個人」から「分人」へ』(講談社現代新書)という本に、「人って対応する相手によって自分というものを変えてるよね」「いる場所によって人って変わっちゃうよね」ということが書かれていて、「そういう生き方で別に良くない?」っていう内容なんです。それにはけっこう励まされてきたのですが、一方でコミュニティに合わせてカメレオンのように自分を変えていると、途中から「自分」というものがわからなくなり、迷走していました。そこで「自分って何だろう」と考えた時に、「自分の才能」が見つかれば、もしかしたら揺るぎない自分が見つかるのではないかと思ったんです。
―ご自身の才能は発見できたんですか。
佐野:他者の才能発掘のセッションは1回に2時間半以上かけています。これまでに300名以上と行っていますが、そのセッションで得られた「才能発掘」の構造を自分の中に取り入れて、自分自身にセッションを実施しました。才能発掘の第一セッションでは、欲求を見つけるところから始めるのですが、僕の欲求は「インパクトを与えたい」なんです。インパクトを与えるってどういうことかというと、レバレッジを効かせるイメージです。レバレッジはテコの原理といわれる通り、まず自分の小さなインパクトを社会に与え、次に人と一緒に働くことで、二人分のインパクトを与える。そして、それが拡大していき、組織になるとさらにレバレッジが効きます。最小のコストで最大の成果を出すというレバレッジインパクトを達成したいんです。そういった欲求があるので、僕はチームで成果を出したり、仲間たちと何かをしたりするのが才能となっていきました。つまり、僕の才能は自分一人ではやらないってことですね。
また、自分セッションで行った大きなことは、自分の中のコアバリュー、パーパス、ミッションを見つけるという作業です。自分のコアバリューを見つけ、コアバリューからパーパスを、パーパスからミッションを見つける。そして、最後にそれがGood Feelingかどうかという指標を使うんです。Good Feelingかどうかって、心理学でいうとプラスマイナスで簡単に判断できる自分の感情認識なんですね。Good Feelingじゃなかったら体が痛いし疲れるし、仕事をしていても、もう帰りたいと思います。Good Feelingであれば、そうは思わないじゃないですか。そこに怖いという感情はありません。つまり、怖いものがない状態が才能発揮に必要な発動条件の必須項目になります。
―すごくおもしろいです。自分の中にコアバリュー、パーパス、ミッションを見つけることは、人生を歩むうえでも大切ですし、仕事においても目標になりますよね。
佐野:「人間理解」と「知る・分かる・楽しい」が僕のコアバリューなんですよ。人間理解って僕の中ではずっとテーマで、人間が怖かったので理解したかった。でも知ると楽しいって思いもすごくあって、怖くなければ楽しいんですよね。そして僕のパーパスはその人間理解を通してGood Feelingな社会をつくるっていうもの。ミッションが「才能研究する」なんですよ、シンプルに。
―最後に株式会社COTENがめざす企業の姿を教えてください。
佐野:新しい自律分散型組織モデルを形成し、世界的にもそれが有用なモデルだといわれるところまで広めたいと思っています。人も組織も社会も良くなる。この三方向が良くなるという組織形態がCOTEN独自の自律分散型組織だと確信しているので、それを完成させたい。なかなか完成はしないんですけどね(笑)。三方向に良いものをつくるとなると、ズレが生じがちな経営者の視点と社員の視点をマッチングさせる必要がありますし、そのほかにも多くの課題が発生すると思います。それを皆で「こうするべきだよね」と考えて、一つひとつ改善していくしかないのかなと思っています。時間はかかると思いますが、COTENなりの自律分散型組織の実現を通してミッション(「メタ認知を高めるきっかけを提供する」)を達成し、会社も個人も「しあわせ」になることをめざしていきます。
株式会社COTEN 取締役兼CGO 1991年、東京都生まれ。東海大学政治経済学部政治学科卒業後、IT上場企業に入社。フリマアプリ事業責任者を務め売却し独立。2018年、経営者や芸能人を対象としたタレントマーケティング支援事業で起業。2020年、歴史を通じて、人々のメタ認知を高めるきっかけを提供する事業を行う株式会社COTENのビジョン、ミッションに共感し参画。同年10月、才能を100%引き出すことに責任を負うCGOとして同社に入社し、2022年3月取締役に就任。
株式会社COTEN - https://coten.co.jp/
Podcastで人気の #COTENRADIO を運営する(株)COTEN(@CotenInc)取締役兼CGOの「たかちん」こと佐野貴さん(@takachiiiiii3)にお話をうかがいました!
— この指とーまれ! │ 丸井グループ (@maruigroup) September 16, 2022
才能に興味を持ったきっかけや、COTENの人材育成についてなど
才能を活かすヒントをたくさんいただきました#コテンラジオhttps://t.co/hsPeBb1HU1
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