対話・対談
2022.4.21

ライフイズテック×共創チームでDXを通じて未来を共に創る

  • 伊藤 真
    株式会社丸井グループ 人事部 人材開発課
    (2022年3月当時)
  • 吉原 恵子
    ライフイズテック株式会社 DX事業部 兼 経営戦略室
  • 杉山 華奈子
    株式会社丸井グループ 経営企画部 新規事業開発担当
    (2022年3月当時)

丸井グループは、投資先・協業先との取り組みをグループ全体で加速するために、グループ横断で「共創チーム」を組成しています。現在は24チーム(合計212名)体制(2022年3月時点)となり、さまざまなスタートアップ企業と共創を進めています。ライフイズテック株式会社との共創チームは、学生対象のアプリ開発プログラム(アプリ甲子園)への参加や新規事業創出イベントなど、デジタルをツールとして将来世代と共創を進めています。今回は、ライフイズテック株式会社 吉原 恵子氏と丸井グループ社員2名が、DX推進プロジェクトや今後の可能性について語り合います。

目次

    将来世代への想いが共鳴し、共創パートナーに

    伊藤:今回は、ライフイズテック株式会社の吉原さんをお招きし、共創チームとして進めているプロジェクトについてお話ししたいと思います。私は、株式会社丸井グループ人事部人材開発課の伊藤です。2021年10月からライフイズテックさまとの共創チームに所属し、おもにDX人材の育成に携わっています。

    杉山:私は、株式会社丸井グループ経営企画部新規事業開発担当の杉山です。ライフイズテックさまと一緒に開催した大学生・大学院生の新規事業創出プログラムFuture Accelerator Gatewayの企画運営に携わっています。また、2020年10月の共創チーム立ち上げ当初から、チームメンバーとして参加しています。DX研修の社内波及やアプリ甲子園*などを伊藤さんはじめ共創チームメンバーと共に検討しています。

    吉原:本日はお招きいただきありがとうございます。ライフイズテック株式会社DX事業部兼経営戦略室の吉原です。当社は「2025年までに『イノベーション人材を120万人育てる』」をビジョンに掲げ、中学生・高校生が参加するIT教育プログラム「Life is Tech!(ライフイズテック)」の運営や学校向けプログラミング教材の開発を手掛けるEdTech企業です。

    伊藤:「Life is Tech!」では、現役の大学生・大学院生がメンターとして、中高生を指導しているんですよね。

    吉原:そうなんです。私はDX研修やマーケティングのほかに、大学生・大学院生メンターを育成するリーダーズプログラムも担当しています。

    杉山:大学生メンター・生徒間で「教える」・「学ぶ」の関係性ができていて、すばらしいですね。丸井グループが将来世代を新たにステークホルダーに加え、彼らとの共創を考えた時に、中高生の可能性を開く取り組みをされているライフイズテックさまが、まさに最適な共創パートナーだと思いました。

    吉原:私も将来世代を応援したいという気持ちが同じだと感じました。

    杉山:うれしいです。丸井グループでは、中期経営計画のインパクトのKPIとして「新規事業創出 累計20件以上」「将来世代との共創の取り組み件数 累計150件以上」を掲げています。例えば新規事業を創出する際も、まずはアイデアを形にしたプロトタイプを簡易的なWebページやアプリでつくり、それをもとに改善していくことができればスピードアップにもつながると考えています。だからこそ、デジタルネイティブである将来世代と同じ視点で共創の取り組みを進める必要があると思っています。

    伊藤:そうですね。KPI達成の先にある「今よりももっとお客さまの役に立つため」に、デジタルツールを業務で使用できる環境を整備したり、人材育成したりするのは当然の流れです。ライフイズテックさまとの共創も、この流れの中にあります。

    吉原:ありがとうございます。丸井グループさまと業務提携を結んだ2019年当初は、当社のサービスを丸井グループさまのお客さまに告知するために支援していただきました。例えば、エポスカードご優待サービスとして、「Life is Tech!」のキャンプ参加費やスクールの入塾金がお得になるクーポンコードのプレゼントキャンペーンを実施しました。2020年10月に共創チームが始動してからは共創の幅が一気に広がり、アプリ甲子園へのご参加やFuture Accelerator Gatewayの共同開催など、取り組みが多様化しています。

    杉山:そういったプロジェクトを通じて、将来世代をこれからも応援していきたいですね。

    *ライフイズテック株式会社が2011年から開催している、全国の中高生を対象にしたスマートフォン向けアプリ開発コンテスト

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    加速するDXの取り組み

    伊藤:2024年には、日本の生産年齢人口に占める将来世代の割合が、現役世代を逆転するといわれています。デジタルネイティブである将来世代の常識に対応できない企業は、急速に支持を失っていくでしょう。丸井グループもDX推進に注力して、デジタルネイティブ世代に選ばれる企業になっていかないといけないですね。

    杉山:本当にそう思います。ライフイズテックさまのメンターの方々が、就職したい企業の一つに丸井グループを挙げてくださるようになっていきたいと思います。その第一歩として、ライフイズテックさまにご協力いただき、先日丸井グループの役員向けのDX研修を実施しました。

    吉原:まず驚いたのが、役員の皆さまが自ら「DX研修をやりましょう!」とおっしゃってくださったことです。海外と比べると、日本ではDXの浸透が遅れているといわれています。そんな中で、経営者がそれを課題としてとらえて、先陣を切って会社のDXを進めていくのは、本当にすばらしいと思います。

    杉山:当初は新入社員の研修や新規事業関連の部署で取り入れようとチーム内で議論していました。しかし、青井の「まずは役員からやろうよ!」というメッセージが後押しとなり、物事の決裁をする立場である役員から進めようと決まりました。

    吉原:DX推進は一部の社員ではなく全社的に進めていく必要があります。日本では、デジタルに素養がある人をスクリーニングして、まずその対象者向けに研修を進める例が多いのですが、丸井グループさまの場合は真逆だったので驚きました。

    杉山:ライフイズテックさまの研修は非常にユニークで、将来世代であるメンターの方々の、受講者にITを楽しんで学んでほしいという想いをすごく感じました。

    吉原:企業さま向けの研修においても、将来世代であるメンターが伴走しているのは大きな特徴です。なにより大切にしているのは、まずはデジタルをどれだけ自分に引きつけられるか。つまりデジタルの「自分事化」が重要です。そして、デジタルを知識として「わかる。できる」で終わらせずに「楽しい」と感じることが大切だと考えています。そのためには、「好きになっていただく」ことが大切だと考えています。「好き」という想いが、深く知識や技術を学ぼう、学び続けようというエンジンになり、デジタルを使うことを「楽しい」と感じられるからです。そのために、研修中はニックネームで呼び合ったり、スーツではなくお揃いのカラフルなTシャツを着たりして、メンターと受講者の皆さんがフラットな関係でいられるようにしています。「教える・教えられる」「役員・学生」という固定化された関係がない方が、研修内容を素直に吸収できると思いますし、なにより楽しんで取り組んでいただけると思っています。

    伊藤:そのおかげで、役員とメンターの方々に一体感がありましたね。

    吉原:役員の方々と20代のメンターたちが、フラットに意見交換している姿が印象的でした。

    伊藤:役員向けのDX研修の内容としては、チームで特定の課題を解決するためのアプリを開発するというものでした。プログラミングできるようになるためのインプットだけでなく、課題設定や解決フローも教えていただけるセクションもあったので、デジタルツールが使えるようになるだけでなく、デジタルツールを使ってどのように課題解決できるかを学ぶことができて非常に有意義でした。

    吉原:研修プログラムの設計としては、まずDXの概要を説明したうえで、なぜデジタルが必要なのかを知っていただく。そして、伊藤さんがお話ししてくださったように、理想と現状との差分をデジタルでどう解消するのかを考えます。例えば、混雑しているコーヒーショップに行き、混雑している原因を会計だと特定します。この状況に対して、デジタルを通してどう解決するか、デジタル化できるプロセスはどこかを見つけ出します。

    杉山:うーん...お店に行くのはリアルでしかできないから、インターネットで予約注文をして、事前にお会計を済ませるとかでしょうか。

    吉原:そうですね。フローチャートも作成しながら、解決する筋道や順序を考えていきます。そして、データの流れを理解しアウトプットする。この思考プロセスを何度もくり返し、最終的には自分で設定した課題を解決するオリジナルのアプリを開発していただきます。多くの方が、DXと聞くと構えてしまいますが、デジタルを活用して、身の回りの小さな課題を解決する経験をしていただくことで、想像していたよりもできるんだ、と思っていただく。このように、デジタルに対する苦手意識を払拭して、自分事化することがとても重要です。

    杉山:役員研修の中でも、アプリで解決したいさまざまな課題が出ていました。ゴルフのスコアを上げたいとか、スイーツのお気に入りを見つけたいとか...。

    吉原:私はサーフィンのアプリが特に印象に残っています。

    伊藤:サーフィン好きな役員のチームが、朝起きた時に自分の乗りたい波がどこで立っているか、瞬時に検索できるアプリを開発していましたね。希望の波の高さ、風の強さを入力すると、おすすめの海岸と現在地からそこまでのルートが出てくる。しかも、海岸周辺のおすすめのレストランやカフェまで提案する仕様でした。

    吉原:波の高さやルートの距離をしっかりとデータ化されていたのが、すばらしかったです。なにより、役員の皆さまが前のめりに楽しんで取り組んでくださったことがうれしかったですね。

    伊藤:参加した役員からは、「デジタルで課題解決する意識を社員全員が持つことの大切さを実感した」や「デジタルに対する心理的なハードルが下がった」などの反応がありました。この研修をきっかけに、全社的にDXを推進していきたいです。

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    新しい可能性を生む、デジタルと共創

    吉原:アプリ甲子園やFuture Accelerator Gatewayなど、丸井グループさまとの共創で進めているプログラムを通して成長した学生たちが、DX研修のメンターとしても活躍するという人材を育成する循環をつくりはじめています。今後この人材育成の仕組みをさらに推し進めるために、当社のプラットフォームをどのように活用できるのか、共創チームでよく話し合っています。

    伊藤:まだ構想段階ですが、DX研修がインプットの場だとしたら、アウトプットの場として社員が参加する「社内版アプリ甲子園」を開催したいと考えています。研修を受けるだけで終わらせず、アプリやWebページなどを自分でつくれる人を増やしていきたいです。

    杉山:伊藤さんは、アプリ作成を勉強されているんですよね?

    伊藤:今は、アプリではないですが、Webサイトをチームメンバーと一緒につくろうとしています。研修の内容や募集要項などはもともと紙で通知していたのですが、今後はそういうものもデジタル化していきたいと考えています。検討中の「社内版アプリ甲子園」などに一人でも多くの社員に興味を持ってもらって自発的にDXにかかわってほしいです。そうすれば、徐々にデジタルが身近にある土壌ができていくと思います。

    吉原:デジタルは将来世代に任せるのではなくて、世代を問わず全員がデジタルにかかわっていくことが重要です。デジタルで可能性が広がるのは、中高生だけではないはずです。デジタルが持つ課題解決の力を信じて、世の中をより良くするためにどう駆使していくのか、全世代が考えていくべきです。

    杉山:本当にそう思います。デジタルネイティブである将来世代と共創するためには、まず私たちが学ぶ必要があります。ただ、コードが書けるとかプログラミングができるというだけではなくて、デジタルをツールとして実現したい未来を描くことが大切だと思います。デジタルを活用すれば、もっと楽しくさまざまな世代と共に未来を考えていけると心から思います。このような気づきも、ライフイズテックさまとの共創によって得られたものです。

    吉原:私自身も、あらためて将来世代との共創による可能性やDXによって、どのような価値を社会に提供できるのかを考えるきっかけになっています。もっとつながりを強くして、共創の取り組みをどんどん増やしていきたいです。

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    吉原 恵子

    ライフイズテック株式会社 DX事業部 兼 経営戦略室2014年、ライフイズテック株式会社入社。カスタマーリレーションを経て、中高生向けITプログラミングキャンプ事業のマーケティングや、キャンプディレクターを担当。現在は経営戦略室でDXマーケティングや、プロジェクトマネージャーを務める。

    伊藤 真

    株式会社丸井グループ 人事部 人材開発課(2022年3月当時)2014年入社。新宿マルイ 本館で2年間販売業務を経験し、その後、雑貨アイテムのバイヤーを務める。2018年より、コーポレートブランディングを推進するグループデザインセンターの立ち上げに携わり、2020年4月より人事部人材開発課。2021年10月よりライフイズテック共創チームに加わる。

    杉山 華奈子

    株式会社丸井グループ 経営企画部 新規事業開発担当(2022年3月当時)2008年入社。店舗で販売経験後、CSR推進部(現 サステナビリティ部)、エポスカード提携事業部、労働組合本部を経験。その後、新規事業推進部にて新規事業創出プログラムの開発に携わり、2019年4月より経営企画部新規事業開発担当。2020年10月よりライフイズテック共創チームに加わる。

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